試合を生で見る機会は限られるのだが、今季の広島に持つ印象はいつも同じような気がする。それは「内容は悪くはないのだから、決めるところを決めていれば」という敗戦だ。第9節のFC東京戦、第15節の川崎戦、そして第17節の浦和との試合。偶然なのだろうか、スタジアムで見た3試合はすべて勝機がありながらの1点差負け。例年、J2降格圏の順位でもがくチームには、戦力が見劣りして気の毒に思えるチームがある。しかし、広島の試合ぶりからは「弱小感」はみじんも感じられない。なんで広島が17位という位置にいるのかが理解しにくい。サポーターはその思いがさらに強いのではないだろうか。

それもそのはず、シュート数を見れば、第17節までJ1今季最多を争うほど打っているのだという。7月1日の浦和戦でも放ったシュートは8本。調子を落としている相手とはいえ、Jリーグを代表する強豪を相手にも真っ向からの「殴り合い」を演じているのは事実だ。試合内容を見て、現在の順位とイメージを合致させるのは簡単ではない。

浦和戦に臨むまで3連敗中。その中で広島が奪ったゴールはわずか1。深刻な決定力不足なのは疑いない。だが低迷の最大の原因は守備にあるのではないだろうか。今季、ちょうどリーグの半分となる17試合を終えた時点での失点は30。これは直近のJ1制覇を成し遂げた2015年の34試合で喫した失点と既に同じだ。J1連覇を成し遂げた2012年、13年の失点は34と29。広島は堅守が持ち味だった。

昨年のJ1得点王ウタカ、一昨年の得点ランキング2位のドウグラスが抜けた穴は確かに大きい。だがそれ以上に、試合運びの基盤となる守備が崩れていることが、安定した戦いができていない原因なのではないだろうか。「ずっと追いかける展開なので、体力的にもきつくなるし精神的にもきつい」。ビハインドを追い掛けざるをえない展開は、自分たちのペースを崩し無理を強いられる。ベテラン森崎和幸の言葉が、苦しむ広島の現在の正直な心情だろう。

広島がまたも1点差負けを喫した浦和戦。3-4の派手な点の取り合いは、厳しく見ればお互いに試合運びのまずさが目立った一戦だった。広島と同じく前節まで3連敗中。シーズン序盤に見せた強さからは程遠い浦和は、パスがほとんどつながらず、決定機にも判断が遅れシュートさえ打てない。前半のペースは広島だった。しかし、より流れの悪いチームというのはこういうものか。その浦和に前半終了間際に立て続けに2点を許してしまう。広島にとっての最悪の展開だった。

ところが後半は逆に浦和が、こちらも「負」に取りつかれたかのようなまずいプレーを連発する。後半2分に皆川佑介の今季初ゴールで1点差にされると、守備陣が急に浮足立つ。9分には広島のドリブラー柏好文に対応できずにアンデルソンロペスに2-2の同点とされた後は、守備意識が薄いDF陣が広島の攻めにまったく対応できない。27分には広島にカウンターから2対5の局面をつくられ、またもアンデルソンロペスに決められて2-3と逆転されたのだ。

それでも浦和に運があったのは、またもカウンターから1対3の場面をつくられたときに、柏が珍しくドリブルでミスを犯したことだ。あの瞬間、皆川とアンデルソンロペスは、左右の位置で完全にフリーだった。そこへ柏からパスが出ていたら、試合は4-2で終わっていた可能性があった。絶好のダメ押しのチャンスを広島が逸したことが、結果的に浦和に再逆転を許す要因となった。

勝てた試合が終わってみれば勝ち点ゼロ。ショックは倍増する。森保一監督は「いい試合をしてくれたと思います。0-2から試合をひっくり返すことは、そう簡単なことではない」と前向きな姿勢を示していた。しかし、4日に退任が発表された…。

「確かに失点は多いし、勝ち点も伴わないが、試合内容が最悪なわけではない」という低迷するチームには珍しい状況。こういう状況のチームを本来の姿に戻す作業の方が、案外厄介なことなのかもしれない。

岩崎 龍一(いわさき・りゅういち)のプロフィル サッカージャーナリスト。1960年青森県八戸市生まれ。明治大学卒。サッカー専門誌記者を経てフリーに。新聞、雑誌等で原稿を執筆。ワールドカップの現地取材は2014年ブラジル大会で6大会連続。