スター誕生が熱望されていたヘビー級が大きく動き出した。

4月29日、ロンドンのウェンブリー競技場で行われた国際ボクシング連盟(IBF)ヘビー級タイトルマッチ、王者アンソニー・ジョシュア(英国)と、元3団体統一王者ウラジーミル・クリチコ(ウクライナ)の一戦、ダウンの応酬という熱戦の末、ジョシュアが11回TKO勝ちを収め、新旧対決を制した。

ヘビー級に待望久しいスターが生まれ、今後、ジョシュアを中心に激しい覇権争いが展開されそうだ。

会場には9万人の大観衆が詰めかけた。27歳の若きジョシュアに対し、クリチコは41歳。当然のように予想はクリチコ苦戦と見られていたが、キャリアと底力は本物だった。

試合は王座奪還に燃えるクリチコの執念がすさまじく、序盤から一進一退の攻防となった。5回、ジョシュアが連打で痛烈なダウンを奪い、ここまでかと思えた。ところが…。

立ち上がったクリチコが意地の逆襲。逆にジョシュアがグロッギーになるシーンもあった。

そして6回、クリチコの右ストレートがクリーンヒット。ジョシュアがダウンを喫した。ダメージは明らかで、クリチコの逆転KOが現実味を帯びてきた。

しかし、この大ピンチを脱したジョシュアは7回以降、スタミナを温存。11回、一気に2度のダウンを奪うと、レフェリーストップがかかった。

「ボクシングは苦しい時もある。そこが勝負だ」とジョシュアはスリル満点のドラマを笑顔で振り返った。

ロンドン五輪のスーパーヘビー級で金メダルを獲得。プロ転向後、無傷の18連勝(18KO)を続けていた。その勢いの中、迎えた初の窮地。その脱出劇にあらためてジョシュアの強さが感じられた。

7回からクリチコの強打をかわし、静かに慌てず反撃の機会を待った。クリチコもさすがに終盤に入ると、スピードが落ちてきた。

11回の集中打は見事なものだった。あのクリチコを沈めたパワーに満員の観衆が惜しみない拍手を送った。

実力を証明したジョシュアには世界ボクシング評議会(WBC)王者デオンティ・ワイルダー(米国)との統一戦実現が望まれる。

ワイルダーは北京五輪の銅メダリストで、プロ転向以来、38連勝(37KO)の快進撃を続けている。

クリチコを退け、一歩リードした感のあるジョシュアが難敵をどうかわし、強打を決めるのか。楽しい話題が一つ増えた。(津江章二)