久しぶりに早実高の清宮幸太郎選手のプレーを見た。

4月27に神宮球場で行われた高校野球の春季東京大会決勝。相手は好敵手の日大三高で、試合はもつれにもつれ延長十二回に早実が18―17でサヨナラ勝ちした。清宮は2本塁打した。

▽両軍7発35点の乱打戦

日大三 400000337000=17

早 実 202020524001=18

飛びすぎるボールに金属バットに加え、日大三はエースを最後まで登板させず両校の投手陣の弱さがもろに出た結果の乱打戦。ただそれを差し引いても、早実の粘り強い戦いぶりには驚かされる。

清宮が入学した2015年夏の西東京大会以来、再三にわたり信じられないような逆転劇をやってのけてきた、その再現となった。

その理由として挙げられるのがやはり“清宮効果"。相手投手が「清宮に打たれたくない」と警戒するあまりリズムを崩し、3番清宮の前の1、2番を出塁させてしまうようだ。この決勝では2番が3安打4四球と全打席で出塁した。

▽成長するスラッガー

清宮自身も成長している。4打席目まで1四球の清宮は八回に直球を右翼席最上段に2ラン。さらに土壇場の九回には変化球をバックスリーン左へ同点3ラン打ち込んだ。

ともに会心の一撃だった。高校通算本塁打は84本まで伸ばした。

バッティングは少々荒っぽくなっている印象で三振する打席も増えているようだが、自分のタイミングで待てた時は確実に打ち返していて、打球もかつて多かったライナー性より飛距離アップにつながる高い弾道になっている。

プロ野球のスカウトも育てたい打者として評価しているだろう。

▽人気カードに球場変更

東京都の春、夏、秋の公式戦は準々決勝あたりから神宮球場や隣接の神宮第二球場を使用する。今年の春季大会も当初は大学野球の日程と重なり神宮第二で予定されていた。

しかし決勝戦が早実―日大三の人気カードとなり、5600人収容の神宮第二では収容しきれず混乱が予想された。

そこで神宮で東都大学リーグ後の午後6時開始のナイター開催が決まった。昨年の秋季大会は昼間の神宮で約2万人が入ったことも背景にあった。

▽100万人超したネットテレビ

甲子園大会では試合が長引きナイターに突入するのはよくあるが、最初からナイター開催は高校野球では初めて。異例ともいえる試みは、熱心な高校野球ファンや両校OBも仕事を終えて駆けつけられるメリットがある。

東都大学リーグの試合の最中には球場周辺に400メートルもの行列ができて、午後5時に開門を早めたほどだった。

主催者発表の来場者数は2万人(入場料は800円)。生中継した無料のインターネットテレビ「AbemaTV」の視聴者数が100万人を超したそうだ。昼の時間帯ではこうはいかなかっただろう。

▽高校野球人気

「清宮人気」に加えライバル校との決勝のナイター試合。首都圏ではNHKを含めたマスコミが事前に取り上げたことも、注目度アップにつながった。

高校野球人気はすごい。20年ほど前になるが、福岡勤務時代に大分で行われた九州大会を見たが、満員のスタンドの盛り上がりがすごかったのを覚えている。

▽物議醸した長時間試合

今回の東京都高野連は日程消化に加えファンサービスを兼ねナイター開催に踏み切ったのだが、どこまで「ナイターへの対策」を考えていたかについては少々疑問がある。

試合終了が午後10時6分。確かに高校野球では異例ともいえる4時間2分の長時間試合となった。

結果論ではなく、何が起こるか分からないのがスポーツの試合。関係者が「10時のデッドライン」をどう考えていたかであり、この対応の甘さを指摘されている。

もちろん、都高野連はスタンドで応援の高校生に学校を通じて帰宅を促し、途中で球場を後にした来場者もいたが、白熱した試合に席を立てず多くの観客、中には小中学生も最後まで観戦していたのも事実だった。

▽試合打ち切りは検討されたか

関係者は胸をなで下ろしていたと思う。試合は延長十二回で決着したが、規定では延長戦は十五回まで。引き分けた場合は2日後に神宮第二で再試合を予定していた。

もし十五回まで行われていれば、午後10時半は優に越えただろう。そうなればもっと大きな反響が巻き起こっていたはずだ。

試合の打ち切りを検討したという声は聞こえてこなかった。延長戦に突入したのが午後9時半。ここが一つの対応のチャンスだったと思う。

▽打ち切る決断

高校生の深夜に及ぶ活動の規制の一つとしては、労働基準法で18歳以下の学生アルバイトなどが午後10時から翌午前5時までの深夜は原則禁止されている。同列に扱えるかどうかは難しいが、応援の高校生や選手たちにも影響を与える長時間試合だったといえる。

都高野連は「翌朝は授業もあった。心配する親もいる。時間で打ち切るなどナイター開催については考えないといけない」と語ったが、結局は閉会式を中止しただけだった。

▽タイブレーク導入に前進か

高校野球は選手の健康管理などで来年は大きな節目となる。試合の早期決着のための延長戦でのタイブレークが、早ければ来年春の選抜大会から導入される可能性が高まっている。

今春の選抜で2試合連続して十五回引き分けがあったことを受けて、日本高野連は「かなり風向きが変わってきた。何も変わりませんという答えはないのかな」と話している。

さらに来夏の甲子園大会は100回の記念大会で出場校が一気に7校増え56校と史上最多となる。

これまでの北海道、東京の他、千葉、埼玉、神奈川、愛知、大阪、兵庫、福岡から2校が出場する。

大会期間は実に17日間。優勝まで7試合を要する。既に一部の公式戦で実施されているタイブレークの検討とともに、投手の登板間隔や投球制限の議論も必要となろう。

奇しくも、日大三と早実の試合はそんな議論を提供した格好の試合となった。

田坂貢二[たさか・こうじ]のプロフィル

1945年広島県生まれ。共同通信では東京、大阪を中心に長年プロ野球を取材。編集委員、広島支局長を務める。現在は大学野球を取材。ノンフィクション「球界地図を変えた男 根本陸夫」(共著)等を執筆