Jリーグは欧州などのリーグに比べ、各チームのレベルが接近しているリーグといわれる。2011年の柏、14年のガンバ大阪。J2から昇格したばかりのチームが、いきなりトップ・ディビジョンの優勝をさらったのが好例だろう。とはいえ、2部から1部へ昇格したチームの最初に掲げる現実的な目標は1部残留だろう。

ここ数年のJ1を見ても、昇格チームの1部残留が簡単でないのは分かる。最下位の18位でシーズンを終えているのは、J2から昇格してきたばかりのチームが多い。しかも、過去5年の18位チームに限って見れば、勝ち点20以上を挙げたのは15年の山形だけで24点。16年の福岡は19点。12年の札幌、13年の大分、14年の徳島の3チームは、わずか14点だ。J1で獲得できる最大勝ち点が3×34の102ポイントだということを考えると、いかに昇格チームがJ1で苦戦を強いられたかがうかがい知れる。

今シーズン昇格してきた3チームは、それに比べれば例年になく、あくまでも「普通」にJ1を戦っている。4月22日の第8節を終えた時点の順位は、セレッソ大阪が13点で8位、清水が11点で11位、そして札幌が8点で15位。混戦模様が続く中で勝ち点を重ねている。特に5シーズンぶりに昇格した札幌の健闘は、J1での優勝争いの経験もあるC大阪や清水とは違い、心配があっただけにある意味で新鮮に感じる。

首位浦和とアウェーで対戦した第8節。札幌はうまくいけば勝ち点を獲得できる可能性があった。確かに2-3の試合を冷静に振り返れば、浦和のペトロビッチ監督が記者会見で言った「内容だけを見れば仙台戦の7-0に近い」というのも事実だった。シュート数を比べても、浦和の20本に対し札幌は6本。実力差は明らかだった。

しかし、サッカーは勝敗を判定で決めるものではない。奪ったゴールの数で決めるものだ。浦和のシュートミスにも助けられたが、195センチの韓国人GKク・ソンユンが度重なる好セーブを披露。失点を最小限に抑えていた。先に得点を許し、たたみ掛けられる可能性もあったが、その前に兵藤慎剛がワンチャンスをものにして1-1の同点。前半34分のゴールは、札幌のチーム2本目のシュートだった。

押し込まれ、リードを許しながらも、浦和に食らいついていく。「リアリストとしてのサッカー」に徹していた札幌にとって不運だったのは、結果的に決勝点となった3点目のPKだ。浦和のホットライン、ラファエルシルバのスルーパスで興梠慎三がGKと1対1。そのシュートをク・ソンユンがはじき出したが、こぼれ球を興梠が素早くフォロー。背後から追走したDF横山知伸のすねに、走る興梠の脚が接触したように見えた。これで倒れたプレーがPKと判定されたのだ。後半42分、1-3の状況から札幌は福森晃斗の直接FKから2-3と1点差まで追い上げた。それを考えると、後半29分のPKがなかったら首位を相手に勝ち点1をもぎ取っていたことになる。

微妙な判定については、ク・ソンユンも「PKじゃないと思う」と疑問を感じていた。それでも最後は「でも、しょうがないっす」と割り切った様子だった。敗戦にも自分自身を納得させる何かがあったのだろう。それは2-3のスコア以上に大きかった両者の実力差なのか。上手な日本語で「興梠選手のファーストタッチとか、スルーパスがピンポイントで入ってくるので(自分が)飛び出しにくかった」と、22歳のGKはコメント。肌で感じたJ1トップの迫力を語っていた。

シーズンは始まったばかり。昨シーズン上位にいた大宮や広島が予想外に低迷しているが、冬になって順位がどうなっているのかは分からない。ただ、言えるのは、今年の札幌は例年の降格チームのような戦いはしないだろうということ。札幌には、日本人の守備者が最も苦手とする「ヘディング大魔王」がいる。計算できるストライカー、都倉賢だ。加えて、体を張れる献身的なDFと、優れたGKが粘り強さを見せる。それは必ず勝ち点の積み重ねにつながるだろう。あとは、まだ短時間しかピッチに立っていない天才、小野伸二のひらめき。それがピッチに戻れば、鬼に金棒なはずだ。

岩崎 龍一(いわさき・りゅういち)のプロフィル サッカージャーナリスト。1960年青森県八戸市生まれ。明治大学卒。サッカー専門誌記者を経てフリーに。新聞、雑誌等で原稿を執筆。ワールドカップの現地取材は2014年ブラジル大会で6大会連続。