現役のJリーガーがチームの垣根を越え、開発途上国で飢餓に苦しむ子どもたちのための寄付団体「SPOON FOUNDATION(スプーンファウンデーション)」を設立した。

4月の発足前から既に100人のJ1選手が賛同するなど支援の輪は広がっており、寄付金は国連世界食糧計画(WFP)の学校給食支援に使われる。

立ち上げの中心となった浦和の元日本代表FW李忠成は「スポーツの持つ力が給食という形で子どもたちに届き、子どもたちの未来を切り開く。これは本当に素晴らしいことだと思う」と活動の意義を強調した。

昨夏から構想を練っていたという李は、浦和のチームメートや他クラブで親交のある選手に協力を呼びかけた。

リオデジャネイロ五輪代表で主将を務めた浦和のDF遠藤航は「もともと何か社会貢献活動をしたかったが、なかなか一人では実現できず、何をしたらいいかも分からない状態だった。李選手から話を聞いてすぐに賛同したいと思った」と、熱い思いに共感してアンバサダーに就任した。

日本でも多くのアスリートが東日本大震災の復興支援などに参加しているが、欧州ではサッカー選手が地位や知名度の高さを利用して、幅広い慈善活動を積極的に行うことで知られる。

かつてサウサンプトン(イングランド)でプレーしていた李は「そういう選手を見て、僕も社会貢献への思いが強くなったのは間違いない」と影響を受けたことを明かし、一昨年までケルン(ドイツ)に所属していた浦和のMF長沢和輝は「特にアフリカの選手はシーズンオフに母国へ帰って学校をつくるなど、個人でいろいろな支援をしていた。僕らも日本人だが、日本からそういう支援をできないかと考えていた」と話す。

WFPへの支援では、2014年にマンチェスター・ユナイテッド(イングランド)のモウリーニョ監督(当時チェルシー)が飢餓撲滅大使を務めた。

15年にはFWイブラヒモビッチ(当時パリ・サンジェルマン)が、WFPの食糧支援を受ける50人の名前を消えるタトゥーで上半身に描いた。

試合で得点した後にユニホームを脱いでアピールし、世界の注目を集めるという珍しいパフォーマンスに李は「アスリートの力に感動し、鳥肌が立った」と強く心を打たれたという。

自身は昨年のYBCルヴァン・カップ決勝で受賞した最優秀選手の賞金100万円を寄付し、さらに試合で1ゴールにつき5万円を贈ることを決めた。

4月7日の仙台戦のゴールで早くも有言実行し「1点でも多く取れば子どもたちに笑顔を届けられる」と、得点意欲をかき立てている。

今後はホームページ <http://spoon.gives> でファンからの寄付も募り、選手のユニホームやスパイクを出品するチャリティーオークションを実施するアイデアもある。

代表理事を務める前国連大使の吉川元偉氏は「こういうものが結実して世界が変わるのには時間がかかる。できるだけ早く、子どもたちの生活を変えられれば」と期待を込め、李は「支援を受けた子どもの中から、将来世界で活躍するプロサッカー選手が生まれることを夢見ている」と青写真を描く。

日本から遠く離れた途上国の飢餓や貧困という問題に関心を示し、実際に行動を起こすことはプロサッカー選手であっても決して簡単ではない。

国内でも大きく告知することなく慈善活動に取り組むクラブや選手も少なくないが、今回のプロジェクトのように多くの選手を巻き込んで発信することは、活動そのものの規模を大きくするだけでなく「サッカー」や「Jリーグ」といったものの社会的地位を高めることにもつながるだろう。

田丸 英生(たまる・ひでお)1979年生まれ、東京都出身。共同通信名古屋、

大阪運動部を経て、09年12月から本社運動部でサッカー、ボクシングを中心

に取材。Jリーグはこれまで名古屋、G大阪、鹿島、柏、浦和、清水などを担当。