日本の優勝はならなかった第4回ワールド・ベースボール・クラシック(WBC)を取材し、今もさまざまなシーンが脳裏に焼き付いている。なかでもオランダ代表の面々のことが印象的だった。

2大会連続で4強入りする実力を誇るチーム。国を代表している重圧もあるだろうに、野球を楽しんでいるのがよく分かった。ミューレン監督も「集まると、子どものように、わくわくしながらやっている」と口にしていた。

前回大会以上に集まったメンバーは豪華だった。米大リーグで昨季21本塁打を放ったボガーツ(レッドソックス)や、20本塁打を放って名門球団で正遊撃手を務めているグリゴリアス(ヤンキース)、25本塁打のスクープ(オリオールズ)に、堅守のシモンズ(エンゼルス)、売り出し中のプロファー(レンジャーズ)。準決勝からは通算189セーブのジャンセン(ドジャース)も加わった。それらの顔触れに、日本球界で大活躍をしているバレンティン(ヤクルト)とバンデンハーク(ソフトバンク)も入った。

試合中も笑顔が多く、勝負どころでは一打、一打に選手がベンチ前にまで飛び出し、声を張り上げ、喜びを爆発させる。

2次リーグを突破できるかどうかが決まる3月15日の日本とイスラエルの一戦は首脳陣、選手、そしてその家族、友人も集まって全員で宿舎の一室で観戦したという。

ワンプレーごとに歓声が上がり、バンデンハークは「みんなエキサイトしていた」と言う。日本の勝利で準決勝進出が決まり、バレンティンは「思い切り祝福した」と興奮した時間を振り返った。

翌16日は東京ドームで練習を行い、その後、準決勝が行われる米国に向かったが、その打撃練習中のことだった。

ある選手がサッカーボールを持ち込んだことで、ケージ裏で即席のミニサッカーが始まった。時折、監督やコーチも交ざり、無邪気に遊んでいた。

国民性の違いもあるので比較することに意味はないかもしれないが、大会中の日本代表では例え練習中でも、絶対に起こりえないシーンだった。

キュラソー島などカリブ海のオランダ領の島々で育った選手が大半で、昔から顔見知りで、気心が知れている。だからこそ、練習中からどんな時も旧友と一緒にいる時間を楽しんでいた。

スクープは「お互いがよく知っている。みんなのクセ、特徴を知っているので、いいコンビネーションができる」と言い、ボガーツは「子どものころから知っていた。仲がいい、というところから来る強さもある。みんながそれぞれを信じ合って、チームとして出来上がっている。ミスをしても他がカバーする」と自信を見せていた。

好調な打撃でチームを引っ張ったバレンティンは「チームメートがいい働きをした。彼らのおかげ」といつも周囲を立てていた。

WBC後にはメジャーの長いシーズンが控えるため、コンディション面を考えれば、各選手に辞退する選択肢があっても良かった。ただ、そんな選手はいなかった。ミューレン監督は「彼らはこのチームでお互いと一緒にプレーすることが大好き。去年の8月から(出場を要請する)電話を掛け始めたが、彼らは全員が『はい、出ます』と言った。(メンバーを決めることは)本当に簡単なことだった」そうだ。声を弾ませるミューレン監督を見ていて、筆者もうれしくなった。

浅山 慶彦(あさやま・よしひこ)2004年共同通信入社。相撲、ゴルフなどを経て、プロ野球担当に。阪神、ロッテ、巨人などを担当。愛媛県出身。