ノルディックスキーのワールドカップ(W杯)ジャンプ女子は3月12日にオスロで個人最終戦が行われ、今季の全日程を終えた。

平昌冬季五輪のプレシーズンで世界選手権も開催されるなど、4年に一度の大舞台に向けた勢力図が徐々に見えてきた中で、第一人者の高梨沙羅(クラレ)にとっては悔しさの残るシーズンとなった。

残した数字は今季も圧巻だった。W杯は出場した17戦で9勝。2試合に1度を上回るペースで勝ち、2季連続の総合優勝を果たした。4度目の個人総合制覇は複合の荻原健司氏を抜いてスキーの日本選手最多。通算勝利は男子のグレゴア・シュリーレンツァウアー(オーストリア)と並ぶ53まで伸ばした。それでも自己採点は「30点」と低かった。

理由は重圧のかかる試合で頂点を逃すケースが目立ったことにある。通算50勝が懸かった日本開催のW杯4戦ではまさかの優勝なしに終わり、歴代最多勝利更新が期待された平昌五輪のテスト大会を兼ねたW杯では大事な1戦目で2位。個人で初の金メダルを狙った世界選手権でも銅メダルにとどまり、無念の涙を流した。

今季は節目の記録が目白押しだったこともあり、さすがにシーズン終了後の記者会見では「何も意識していなかったと言えば嘘になる」と正直に口にした。

いずれの試合も力みからか、本来のジャンプができたとは言えず「結果にばかり目がいってしまい、自分のやるべきことを見失ってしまった」と硬い表情で反省の言葉を並べた。

それでも平昌五輪では金メダル候補の筆頭であるのには変わりない。技術の高さは折り紙付き。鍵を握るのは、やはり精神面だろう。

もちろん重要な試合では、鍛錬を積んだアスリートでも力んだり、硬くなったりする。ただ、20歳の女王は、少し周囲の期待を一人で背負い込みすぎているようにも映る。

3位だった今年の世界選手権。試合後のテレビインタビューに気丈に答えた後、ペン記者が待つ取材エリアでも声を絞り出して丁寧に質問に答えていたが、涙をこらえ切れなくなった場面があった。それは「応援してくださる皆さんにいいところを見せたかった。夜遅くまで応援していて良かったと思ってもらいたかった」という言葉を発した時だった。

もともと非常に責任感の強いアスリートだ。夜10時頃には就寝し、早朝5時には起床。全てを競技にささげるストイックな生活を送る。

試合前はコーチの声も聞こえないほど、集中して緊張感を漂わせる。取材でも周りを囲んだ質問者に対し、毎回きちんと向き直って目を見て話し、テレビ局から頻繁に化粧に関する質問が飛ぶようになっても、嫌な顔一つせず丁寧に答えてきた。

高梨の口からは「感謝」という言葉がよく出る。小学生から注目を浴び、周囲のサポートを受けて競技をしてきただけに、その意味を十分に理解しているのだろう。

ただ、もうちょっと周囲を気にせず、自分のために飛んでも、きっと誰も文句を言わないはずだ。

20歳のジャンパーは、この種目で誰よりも素晴らしい結果を残してきた。もっと胸を張っていい。肩の荷をおろして、自信を持って金メダルを目指してほしい。

益吉 数正(ますよし・かずまさ)1981年生まれ。宮崎県出身。2005年共同通信入社。千葉、甲府、福岡の支社局で警察などを担当後、大阪運動部を経て、13年2月から本社運動部。プロ野球の遊軍を2年間担当し、14年12月からスキーや陸上競技を中心に取材。