ワールド・ベースボール・クラシック(WBC)がいよいよ開幕する。

世界一奪還を目指す「侍ジャパン」の初戦は3月7日のキューバ戦(東京ドーム)。日本人メジャーは青木宣親外野手(アストロズ)一人で、前田健太(ドジャース)ら投手は不参加となり苦しい戦いが予想されている。チームを引っ張るヒーローの誕生が上位進出の鍵だろう。

2月に発表された今大会のルールではタイブレーク、コールドゲーム、投球数制限と登板間隔、ビデオ判定とともに順位決定方式が書かれている。

▽日本は失点率で命拾い

1、2次リーグは上位2チームがそれぞれ勝ち進むが、3チームが2勝1敗もしくは1勝2敗で並んだ場合は当該チーム間の(1)失点率(2)防御率(3)打率(4)抽選で順位を決める。

思い出すのが2006年の第1回大会。日本は2次リーグで敗退の危機を救ってくれたのが失点率だった。

日本、米国、メキシコが1勝2敗で並び、失点を守備イニングで割る失点率で勝り辛うじて準決勝進出を果たし、初代王者に結び付けた。

▽投手評価の目安

2番目の防御率はつまり守備1イニングあたりで自責点数が少ない方が上位になるというものである。

自責点とは投手が自分で責任を負う失点のことで、これをもとに防御率が出される。

その算出方法は自責点に9と3を掛けこれを投球回に3を掛けた数字で割る。つまりシーズン179回を38自責点で投げた投手の防御率は1・91。1試合に換算すると、この投手は約1・9点の自責点しか取られていないことになり、最優秀防御率のタイトルを争える好投手といえる。

投手の評価の目安となる数値であり、同じようにチーム防御率が低ければそのチームは上位に位置するのが普通である。

勝敗に直接関係しない数値だが、WBCではおろそかにできないことになる。

▽日本は得点するごとに判断

野球にかなり詳しいファンなら知っているだろうが、防御率のもとになる自責点は日米のプロ野球でその判断が違う。

日本は走者が得点した時点で自責点になるかどうかを決めると「野球規則」に明記されているが、メジャーを中心にアマチュアの国際試合ではそのイニングが終了した時に判断されるのが主流である。

例えば、1死三塁の場面で捕逸で得点したら、日本では自責点にならないが、メジャーでは後続打者の結果つまり安打が出れば、捕逸がなくても生還できたと判断したりする。

日本の野球規則では「自責点は安打、犠牲バント・フライ、盗塁、刺殺、野手選択、四死球、ボーク、暴投により得点するたびに記録される」とあり、失策や捕逸など投手の責任外の出塁や進塁は対象から外している。

▽東京五輪では

自責点を判断する上で、日本とメジャーのどちらが理にかなっているかどうかというもので、日本でも“メジャー流"を支持するプロ野球公式記録員はかなりいる。

東京で行われる1、2次リーグでも米国の公式記録員が担当するようだ。さらに2020年の東京五輪での野球もある。

「国際基準」としてメジャー流が主流になると思うが、いい機会だからプロ野球をはじめアマ球界も議論を始めたらいい。

▽敬遠四球のルール改正

メジャーでは今季から「敬遠の意思表示をすれば投手はボール4球を投げなくても打者を一塁に向かわせることができる」というルール改正がスタートする。試合時間短縮を目的としたものである。

日本は米国で改正されると、ほぼ1年遅れで実施されるのが慣行であり、こちらも今後さまざまな意見が出てくるのは間違いない。

敬遠の投球が暴投になって走者が得点したり、長嶋茂雄氏が敬遠の球を打ってランニング本塁打したり、新庄剛志氏がサヨナラ安打したというのは有名だ。

また、松井秀喜氏が星稜高時代に甲子園で5敬遠されたり、敬遠四球をめぐる球史も多々ある。

そうしたドラマ性もあるが、敬遠と宣言するだけで投手は投げなくていいのは投手の負担軽減となり不公平ではないかという意見もありそうだ。

なるほど、胃が痛くなるサヨナラの場面での敬遠は暴投しないように投手は神経を使うからだ。

▽時間短縮との戦い

米国のプロ野球は有史以来、常に二つの目的を追い求めていると思う。それは「試合時間の短縮」と「試合のスリリング化」である。

野球の草創期は21点を取ったら試合終了となっていたのを、時間がかかりすぎることから1857年ごろに「九回制」が誕生した。改良を重ねてきており、その姿勢は今も続いている。

メジャーの試合時間は日本より短いが、さらに短縮しようとするのはファンサービス以外のなにものでもない。

そこで目を付けられたのが投球数をいかに減らし、スピーディーに展開させようということだ。敬遠にまつわるハプニングは面白いが、得点を競う野球の本質からは離れているとも感じる。

▽定着したビデオ判定

メジャーでは投球のストライクとボールの判定以外はビデオでの判定を認めている。日本では「審判の技術が劣化する」との意見があったが、今やメジャー並みのビデオ活用を求めるファンは多いのではないだろうか。

延長戦を早く終わらせるためのタイブレーク制などがは、違和感がなくなったと言ってもいいぐらいである。東京五輪の野球は時間制もしくは7イニング制といった声も聞かれるなど、「野球と時間との戦い」は今後も続くのは間違いない。

田坂貢二[たさか・こうじ]のプロフィル

1945年広島県生まれ。共同通信では東京、大阪を中心に長年プロ野球を取材。編集委員、広島支局長を務める。現在は大学野球を取材。ノンフィクション「球界地図を変えた男 根本陸夫」(共著)等を執筆