「もったいないとしか言いようがない」。テニスの2017年シーズン最初の四大大会、全豪オープンで錦織圭(日清食品)は4回戦敗退となり、悔しさを押し殺すように冒頭の言葉を発した。

準々決勝で敗れた昨年のノバク・ジョコビッチ(セルビア)に続き、今年も自身が屈したロジャー・フェデラー(スイス)が大会を制した。

昨夏はリオデジャネイロ五輪銅メダル、全米オープン4強と充実の時を経て、「トップレベルに近づいている」という実感があるだけに悔しい負けとなった。

日本のエースは3回戦までシード選手と一度も当たらず、元世界ランキング1位で35歳のフェデラーとの対戦が今大会最初の正念場だった。

序盤は絶好調。鋭いリターン、正確なバックハンドなど錦織の長所が存分に出て試合開始から4ゲームを連取した。

しかし、5―2で迎えた自身のサービスゲームは「あそこをしっかり取れていれば第2セットの入り方も変わっていた」と振り返るようにターニングポイントになった。

15―0からサーブアンドボレーでミスが出てポイントを取られると、30―15から再びネットプレーでミス。このゲームを失うと、タイブレークまでもつれてしまった。

このセットこそ奪ったものの、元王者を完全に生き返らせてしまった代償は高くつく。第2、第3セットを取られて逆転を許し、結局最終第5セットでは余力がなくなって屈した。

プレー自体の完成度は年々高まっている錦織だが、依然として突如集中力が切れる瞬間がある。

4回戦敗退の翌日、報道陣の取材に答えた元全仏オープン覇者でコーチのマイケル・チャン氏(米国)は特に精神面で愛弟子に厳しかった。「ケイは少し気を抜いてしまった。前にも起こったことだ。ロジャーのような選手を相手にそういうことをしてはいけない。彼(ロジャー)がチャンピオンであるのには理由がある」と指摘。第1セットのたたみかけるべき場面でもたついたことへの怒りがにじんだ。

さらに「コートでは情けは無用だ。特に世界最高の選手を相手にするときはね。ナンバーワンになる選手は(試合途中で)『よしこれでいける』とリラックスする選手はいない。彼らは最後のポイントを取るまでタフなテニスをやり続ける」と、まくしたてた。

奇しくも、チャン氏の言う「最後のポイントを取るまでタフなテニスをやり続ける」ことを体現したのが決勝戦で戦ったフェデラーとラファエル・ナダル(スペイン)だった。

テニス界の二人の巨星は最終セットまで一進一退の攻防を続け、負けたナダルも最後の最後まで粘った。勝利への執念がほとばしり、正直見ているこちらが「そこまで頑張らなくても…」と思うほどだった。

決勝のフルセットにもつれ込む激戦を終えたフェデラーは、錦織について「彼は努力を続けるしかない。2週間耐えられる体力、常に勝者のメンタリティーを身につけることが大事」との金言を口にした。

ジョコビッチ、アンディ・マリー(英国)の2強が4回戦まででともに敗れた波乱の大会だっただけに惜しまれる結果だが、少年時代に憧れたスーパースターとの四大大会初対戦はさらにステップアップするための“レシピ"を与えてくれたのではないか。

27歳でこれから円熟期を迎える錦織がこの苦い経験をどう肥やしにして始まったばかりの今季を戦うのか、興味は尽きない。

吉田 学史(よしだ・たかふみ)1982年生まれ。東京都出身。2006年共同通信入社。仙台などの支社局で警察や行政を担当して12年から大坂運動部で高校野球やサッカーを担当。14年12月に本社運動部へ異動して、水泳、テニス、フィギュアスケートなどをカバー。