病は気から―。多くのスポーツ選手の話を聞いていると、自分の日頃の悩みがいかに小さいか感じさせられる。巨人の内海哲也投手は昨年末、両肺の間の縦隔にできた腫瘍の摘出手術を受けた。それでも年が明けた1月8日に那覇市で公開した自主トレーニングでは影響を感じさせない元気な姿を披露。本人も「最初はみんなとは別メニューかな」と思っていたそうだが、チームメートと一緒に笑顔も交えながら4時間強の練習をこなした。

発覚したのは昨年12月中旬。シーズン後の健康診断だった。専門医との話し合いの末に手術を決断した。クリスマスイブは家族でゆっくりと過ごし、25日の夜に入院。26日に手術を受けた。子どもたちには心配させないように「遠征に行くよ」と伝えた。内視鏡で腫瘍を摘出。退院後に報道などで察していた子どもたちへ事情を説明。手術痕を見せた際は「怖がられた」と心なしか寂しげな表情で振り返った。

内海はかつて最多勝を2年連続で獲得するなど、巨人のエースだった。しかし、近年は故障や不振にあえぎ、3年連続で2桁勝利がない。特に2015年は左前腕部の炎症によりわずか2勝に終わった。そして今回の手術。普通なら心がくじけそうになる挫折に見舞われても「執念。今年に懸ける思い。今年は絶対にやりたい気持ちが強い。こんなことでつまずいていられない」とむしろ心を奮い立たせる。退院した日に1時間のジョギングとキャッチボールを行ったという。ジョギング再開までは1週間、投球動作再開までは3~4週間としていた医師も「前例のない回復力」と言ったそうだ。まさに根性ではい上がっている。

内海の姿に、自主トレーニングをともにする同僚も目を見張った。山口鉄也投手は「僕ならそれを言い訳に休んで、キャンプインから動きだせばいいと思ってしまう。すごいし、さすがだなと思う」と驚く。キャッチボール相手の大竹寛投手も「術前も一緒にやっていたが(球質は)同じかそれよりもいいんじゃないかと思うくらい。意識の高さを感じる。一つ一つのメニューで抜かないし、伝わってくるので僕もやる気になる」と感嘆した。

私事になるが、筆者は13年末から多発性円形脱毛症を患った。一時的に治った期間はあるものの、頭全体には産毛が生えるだけ。発症当時、深刻に悩んだ。恥ずかしくて、ニット帽なしには外に出られなかった。性格も徐々に暗くなっていった気がする。

炎天下で帽子をかぶっていた15年の夏。あるサッカー女子の日本代表選手から屈託のない笑顔でこう言われた。

「そっちゃえばいいじゃないですか」

あまりにも無邪気な表情に、はっとなった。何を悩んでいるんだろう、と。くよくよせずに、不安や悩みを思い切りさらけ出した方が楽になることもあると痛感させられた。

話を戻す。内海は何事もなかったかのように練習に取り組むが、本心では「今でも不安」と打ち明けた。病気という内面の敵に対して自分の殻に閉じこもらず、真っ正面から戦う姿には胸を打たれる。筆者もまだ治っていない。帽子を脱いで、そり上げた頭で取材している今日この頃、あらためてありのままの自分で過ごす大切さを身に、そして頭に染みて感じる。

☆☆☆本稿は次回から大会開催や話題などに応じて随時出稿します☆☆☆

白石 明之(しらいし・あきゆき)1987年生まれ。埼玉県朝霞市出身。2010年に入社。プロ野球日本ハム、阪神を担当し、サッカーなども取材。16年から東京に戻って巨人を担当する。早実高、早大時代は野球部に所属した。