ホームゲーム開催の度に、スタジアムに足を運ぶサポーター。その熱心さの度合いが高いほど、場合によっては自チームの行っているサッカーが、本当に楽しいかどうかの判断がつきにくくなっている場合があるのではないだろうか。

もちろん、特定のクラブをサポートしようという人々の判断基準は多種多様だ。内容が多少つまらなくても勝利という結果が得られれば満足する人もいれば、結果より内容を重視する人もいるだろう。そのような視点で、自分が居住する地域をホームタウンとするFC東京というチームを考えてみた。

いまさら説明するまでもないが、J1で戦うFC東京はかなりコアなサポーターを抱えている。時に見せるその口の悪さもあり、他チームのサポーターからはかなり煙たがられているという現実もある。

だからこそ、ゴール裏に陣取るサッカー通たちの反応は以前からの疑問だった。試合後、自チームの結果に対してブーイングする光景こそ見たことがあるが、試合内容にあからさまな怒りを表していたという記憶が薄い。勝てばあの内容で満足するのだろうか。昨年、よく見に行ったJ1川崎との比較があって、ますますそう思った。

世界でも有数の巨大都市・東京。そこに本拠を置くFC東京は、例年、シーズン当初の目標として「首都のクラブがタイトルを取ることは義務」を掲げている。しかし、結果は必ずしもサポーターの期待に応えるものではない。

イタリア人のマッシモ・フィッカデンティ監督が指揮を執って2シーズン目にあたる2015年、FC東京はチーム史上最高位タイとなる4位になった。だが、イタリア・スタイルの堅守速攻一点張りのサッカーは見ていて必ずしも楽しいものではなかった。それでも不満が出なかったのは、終盤までタイトル争いに絡んだからだろう。しかも、指揮官就任と時期を同じくして、チームには武藤嘉紀というニュースターが出現した。武藤の存在は、間違いなくサポーターの一体感を強めたはずだ。

ところが、G大阪が天皇杯を制覇したため、繰り上がりでアジアチャンピオンズリーグ(ACL)に出場したチームは16年にひどい目に合う。2度目の就任となった城福浩監督が第2ステージ途中の第5節、10年に続く2度目の解任。結果もそうだが、内容そのものが魅力に欠けるものだった。その後、コーチから昇格した篠田善之監督が現実的なサッカーで8勝2分け2敗と立て直したが、チームは年間順位で前年より五つ落ちる9位に終わることになった。

巨大都市・東京のクラブだからといって、財力が東京都と比例する訳ではない。ただ、FC東京というクラブのメンバー編成を見ていると、いつもどこか中途半端な印象を受けていた。確かにそこそこ優秀な選手の補強はするのだが、これではタイトル争いに絡むのは難しいという感じだ。クラブが優勝を狙っているのか、それともJ2に降格しなければ中位でも構わないという考えなのかがわからなかった。

だが、来る17年シーズン。初めて、FC東京の「本気」を見た気がする。まず、ストライカー以上に試合の結果を左右するGKのポジションにJ1鳥栖の林彰洋を獲得した。加えて、オランダのフィテッセから左サイドバックの太田宏介が復帰した。そのFKは15年、得点源としてチームを4位に押し上げた。高い精度を誇る左足のキッカーが戻ってきたのは、チームにとって想像以上に大きいはずだ。

さらに、前線にはJ1川崎から大久保嘉人、J2名古屋からは永井謙佑が加わった。ともに相手最終ラインの裏を突けるスピードを備えている。ただ、先週までは補強の意図がつかめなかった。既存のメンバーの誰がこの2人のスピードを使いこなすのか見えてこないからだ。車で例えれば、すごい馬力のレーシングカーを手に入れたものの、履いているタイヤが軽自動車用なので何とも心もとないのだ。今年もFC東京の補強は中途半端で終わるのかという思いがあった。

ところが、ここにきて予想外のニュースが飛び込んできた。FCソウルから元日本代表の高萩洋次郎が加入するとFC東京が発表した。12、13年に広島がJ1を連覇したときのゲームメーカーは、スペースを俯瞰(ふかん)できる長短のパスを出せるセンスを持つ。それは、中村俊輔、遠藤保仁、中村憲剛といったパスマスターに通じるものがあるだろう。

懸念された残り一個のピースが埋まった。FC東京がボランチのポジションに、相手の弱点を一撃で突くパサーを置くというのは初めてのような気がする。その意味で今年のFC東京は、各ポジションに穴がない。このメンバーだったら十分に可能だろう。サポーターを楽しませる内容で、しかも結果を得るサッカーの両方取りが。

岩崎龍一(いわさき・りゅういち)のプロフィル サッカージャーナリスト。1960年青森県八戸市生まれ。明治大学卒。サッカー専門誌記者を経てフリーに。新聞、雑誌等で原稿を執筆。ワールドカップの現地取材はブラジル大会で6大会連続となる。