全てのチームが平等な位置からシーズンのスタートを切る。変わりのないレギュレーションでタイトルを争った結果なのだから文句はいえない。ただ、個人的にはJ1の年間優勝を争う明治安田チャンピオンシップやJ2の昇格プレーオフはリーグ戦が本来持つ勝ち点1の価値がないがしろにされているようで違和感がある。

リーグ戦を戦うサッカーチームを家族に例えるなら、指揮する監督は家計を預かるお母さんだろう。決まった金額の中でやりくりをしなければいけない。当然、常に食卓に豪華なおかずが並ぶとは限らない。1年を通せば、お金がなくて良い食材をそろえられない状況もあるからだ。それでもおいしい食事をこしらえれば、家族は幸せな気持ちになる。リーグ戦の勝ち点というのは、この「幸せ指数」と同じものだと思う。そして料理上手のお母さんは、優れた監督なのだ。

その意味で11月23日のチャンピオンシップ準決勝は、川崎にとっては気の毒な結果となった。幸せ指数が72ポイントもあったのに、59ポイントの鹿島に0―1で足をすくわれた。

年間を通して家計をうまく管理していた風間八宏監督だったが、不運なことにこの日に限っては財布の中身は空っぽだった。食卓に並んだスターティングメンバーには、家族の大好物である中村憲剛(途中出場)や小林悠、大島僚太(ともにメンバー外)という絶品食材をそろえられなかった。その状況での敗戦を「リーグ」の最終成績として受け入れろといっても、釈然としないものがある。

来シーズンからJ1は1ステージ制に戻るので、チャンピオンシップも最後となる。でも将来のことを考えればこのシステムの悪しき点をちゃんと分析しておかなければならない。なぜなら、Jリーグ放映の巨額スポンサーが去った後、また人気回復のためにこの一発芸が復活しないとも限らないからだ。

チャンピオンシップ決勝第1戦、11月29日のアウェーでの試合に1―0の先勝を飾った浦和。ペトロビッチ監督は記者会見で通訳が自主規制を行うほど、大会のレギュレーションについての不満をまくしたてた。その最大の焦点となったのが大会日程ついて。「11月12日に天皇杯で川崎と戦って、その後17日空いた」というのがペトロビッチ監督の最大の不満だ。

確かに選手には「試合勘」というのがある。影響は日本代表でも如実に表れてくる。その意味で準決勝を戦ったチームの方が、すべての面でコンディションがいいというのだ。確かに平等ではない。

長期間の空白は試合にも影響したようだ。リーグ終了後、「気持ちの上でも肉体的にもゼロに近い状況になった」という浦和の選手が見せたプレーはリーグ戦とはかなり違っていた。自慢の攻撃陣も歯車がかみ合わなかった。

その意味で家本政明主審が下した後半12分のPK判定は重みを持った。鹿島よりもリーグ戦で15多い74ポイントを積み上げた年間勝ち点首位チーム。それに対する「アドバンテージ」と皮肉をいう者もいた。試合観戦後、帰宅して録画で改めて見直したが、鹿島の西大伍が浦和の興梠慎三と接触したプレーが仮にファウルだとしたら、CKの場面でのポジション争いはほとんどがPKになる可能性がある。しかし、審判の判定もサッカーの一部ということは普遍であることも間違いはない。

第1戦でお互いに守備的になることは予想された。これはリーグ王者を決める試合ではあるが、ホームアンドアウェー方式のノックアウトシステム。初戦で大敗すれば第2戦を前に、ほぼ勝敗は決するからだ。

普段見るリーグより数段激しい球際での争い。しかも、両チームともに守備に強さを持っている。そうなれば簡単にゴールは生まれない。かつては閉じられたその守備網を「個」の力が打開したものだが、残念ながらそのような選手は存在しなかった。

それでも埼玉で今週末に行われる決勝第2戦。チケットが完売したという3日の試合は注目の一戦となるだろう。決して簡単なことではないだろうが、鹿島も2点を奪って勝てばタイトルを手にすることができる。当然、浦和としても10年ぶりのJ1リーグ年間優勝に向けて、最高の準備で待ち構えるだろう。その意味で「リーグ」と称する最高のカップファイナルであることは間違いない。

それにしても、J2では悲劇的なことが続く。今年もリーグ3位の松本がJ1昇格への道を閉ざされた。過去5年、リーグ3位のチームが順当にプレーオフを制したのは昨年の福岡だけ。その意味で今後も同じレギュレーションが続くJ2。こちらのほうが、よりリーグでの「勝ち点1」の価値がないがしろにされているのかもしれない。

岩崎龍一(いわさき・りゅういち)のプロフィル サッカージャーナリスト。1960年青森県八戸市生まれ。明治大学卒。サッカー専門誌記者を経てフリーに。新聞、雑誌等で原稿を執筆。ワールドカップの現地取材はブラジル大会で6大会連続となる。