現在、筆者はプロ野球の阪神を担当している。広島と日本ハムが争った日本シリーズも取材した。10月、夜はぐっと冷え込み、札幌では雪も舞ってきた。こんな時期まで、熱くしびれる勝負を繰り広げられるチームは二つだけ。日本一を懸けて戦った広島と日本ハムの選手、特に若手にとっては、これ以上ない経験となっただろう。一方で、阪神はセ・リーグ4位、4年ぶりにAクラス(3位以内)入りさえ逃した。

ただ、金本知憲監督の就任1年目の今季は、複数の若手が台頭したシーズンともいえる。ドラフト1位新人の高山俊外野手は球団新人記録を塗り替える136安打を放った。青森の光星学院高(現八戸学院光星高)時代に甲子園を沸かせた北條史也内野手は、チームの顔である鳥谷敬内野手に代わって遊撃の定位置をものにしつつある。育成契約から這い上がった原口文仁捕手は持ち前の長打力を発揮して頭角を現した。先発左腕の岩貞祐太投手は初のシーズン10勝。来季は若い力をどこまで勝利に結びつけられるかが鍵だろう。

阪神は人気球団だけに、こういった若手の活躍は、特に関西では大きく報じられるが、今季の成績はBクラスである。セ・リーグ優勝を果たした広島には24・5ゲーム差をつけられ、直接対決では7勝18敗と大きく負け越した。若い力の育成はどこのチームでも当然やっていて、広島ならば「神ってる」活躍で名を売った鈴木誠也外野手ら生きのいい選手が躍動し、CSや日本シリーズという神経をすり減らすような舞台にも立った。「貴重な経験」という意味では、日本ハムはさらに上をいくだろう。個々の好不調や状況に違いがあるから、結果論になるかもしれないが、投手でいえば、宮西尚生投手ら経験豊富な選手だけでなく、若い鍵谷陽平投手や井口和朋投手らも救援に向かう場面があった。

日本ハムが日本一に輝いた10月29日、阪神は高知県安芸市で秋季キャンプに入った。金本監督は、華々しく活躍した若手が翌年低迷する「2年目のジンクス」なんて「今はない」と言い切る。「それは昔々、オフに練習しなかった人たちの言葉」だと。選手は朝からウエートトレーニングに励むなど厳しい鍛錬を積んでいる。この季節に自分を磨かない若手はいないはずだ。

今季、広島と阪神の間には間違いなく「差」があった。そして、ポストシーズンという「経験値」によって「差」はさらに開いたのではないか。広島の鈴木と同じ1994年生まれの北條は日本シリーズを見て、普段なら何でもない「1個のバントでも緊張する」と推し量った。ポストシーズンで若手の血となり肉となった経験。そこを阪神の選手は想像で補うしかない。経験の「差」を少しでも埋める秋季キャンプにしてほしい。

大沢 祥平(おおさわ・しょうへい)1988年生まれ。埼玉県出身。2011年入社。福井支局を経て13年から福岡運動部でサッカーやソフトバンクを担当。15年12月に大阪運動部へ異動し、阪神を担当。