久々に早実高の清宮幸太郎一塁手を見に行った。

11月11日に開幕した明治神宮野球大会に東京都の代表として出場。昨年夏の東京都大会以来、久々にそのバッティングを見た。調子を落としていたようだが、修正しながら好成績を残すあたりは対応力の高さだろう。感心した。

決勝戦では外角寄り低めの難しい球を引っ張り右翼席に今大会初本塁打してネット裏を驚かせた。

大阪の履正社高に打ち負け準優勝に終わったが、清宮は3試合で7打数5安打、7四死球、14打席で凡退したのはわずか2度。主将としてチームを引っ張る姿に「高校2年間の成長」を見る思いがした。

▽よみがえった早実

「ハンカチ王子」の斎藤佑樹(現日本ハム)が卒業して以来、早実はライバルの日大三高などにやや水をあけられていた。その名門校をよみがえらせたのが清宮だった。

昨夏は、下馬評を覆して甲子園出場を果たした。清宮は1年生ながら2本塁打を含む9安打8打点の大活躍でチームをベスト4入りに導いたばかりか、久々の“怪物"出現に甲子園は「清宮フィーバー」に沸いた。

▽そろい出した好選手

そしてこの秋、東京都大会決勝で日大三高に大逆転勝ちして来春のセンバツ出場を確実にした。

この試合、清宮は5三振と打てなかったが、清宮を中心にチームが結束して勝ったのである。1年前より投手と野手で好選手が増えチーム力は確実に上がっていた。これも清宮効果と言えそうだ。

▽相手に意識させる存在

父・克幸氏は早大時代からがラグビーの選手、指導者として有名なこともあって清宮報道は過熱する一方。やや人気先行気味ながら、清宮見たさに球場には多くのファンが集まり早実を応援するものだから、対戦チームはいやが上にも清宮を意識せざるを得なくなる。来春の甲子園でも大きな注目を集めるだろう。

▽進路決定は両親次第か

さて清宮の進路だが、早大進学かプロ野球のどちらかになるだろうが、一部にはいきなりメジャー挑戦という情報もあるにはある。

今のところ、本人の希望は明らかにされていないし、今後1年間の結果にもようるだろうが、両親の意向が大きく左右するのは間違いない。

高校通算76本塁打(練習試合を含む)。高校時代の松井秀喜や清原和博を上回る量産ペースで、プロ球界はその人気と相まって手が出るほど欲しい選手に違いない。学校の成績も良いようで勉強も好きとか。

父が早大、母が慶大という家庭環境から、将来のことも考え大学進学が濃厚ではないかと想像している。

▽同僚から「すごいやつ」

清宮以上に注目されるのが日本ハムの大谷翔平だ。今年は投手と打者の「二刀流」にさらに磨きがかかった。

10勝、20本塁打をクリアしながら日本ハムのリーグ優勝と日本一に大きく貢献した。

オールスター戦や日本代表チーム「侍ジャパン」の強化試合などでも抜群の存在感を見せつけ、同じプロ選手から「すごいやつ」と認めさせ、今年のプロ野球の主役に躍り出たのである。

花巻東高時代に「直接、メジャーを目指す」と公言したように、周囲が何を言おうが、自分の意思を貫き通そうとする強さは「二刀流批難」が吹き荒れたプロ1年目から感じられていた。

▽WBCでは打者か投手か

つい先日終わった侍ジャパンがメキシコとオランダ相手に4試合戦った国際試合。来年3月7日開幕の第4回ワールド・ベースボール・クラシック(WBC)に向けた強化試合では打者として出場し特大アーチあり、東京ドームの天井にぶつける二塁打ありと話題を独占した格好となった。

広島との日本シリーズでも見せた打者としての適応力の高さに加えて、俊足ぶりは目を見張った。

こう見ると、打者として生きる道が有力になりそうだが、投手としても160キロ台の速球を連発しており、とうとう「165キロ」まで到達した。1イニングの抑え役ならまず打てないと思わせる投球も捨てがたい。

WBCでは投手の球数制限や細かいルールがあり、それを見極めながらの起用となるだろうが、この4年間で今や日本代表に欠かせない存在にまで成長したのは紛れもない事実である。

▽メジャーへの道

大谷は着々とメジャーへの道を切り開いているように見える。

日本ハムへ入団時に「メジャー行きの裏契約」が交わされているかどうかは分からないが、1年前の「プレミアム12」や強化試合などの国際試合、そして今春に日本ハムが行った米キャンプなどを通じて大谷の米国での認知度は増すばかりである。大谷の意向はともかく、来年にも激しい争奪戦が予想される。

▽早くも300億円超えの声

つい先日、行われたメジャー全体のGM会議でも大谷は大きな話題になったと報じられていた。

「二刀流なら指名打者制のないナ・リーグの方がいい」といった声が聞かれるようになっている。

今月初旬のニューヨーク・ポスト電子版ではとうとう「総額3億ドルの契約になるかもしれない」とのスカウトの話を紹介している。3億ドルはヤンキース入りした田中将大の倍である。

▽ファンも望むメジャー行き

ダルビッシュ有や田中は、日本シリーズ優勝などを手土産にメジャーへ行った。大谷はもちろん、来年は日本ハムでプレーするが、投手と打者ですごい成績を残して、その価値をさらに上げる可能性はある。

今年は念願の優勝も経験した。ダルビッシュや田中のように「日本ではやり残したものはない」と感じた時が日本球界を去る時となる。なにより多くのファンが「メジャーでの勇姿を見てみたい」と応援するだろう。

あの屈託のない笑顔を見せられればなおさらであろう。

田坂貢二[たさか・こうじ]のプロフィル

1945年広島県生まれ。共同通信では東京、大阪を中心に長年プロ野球を取材。編集委員、広島支局長を務める。現在は大学野球を取材。ノンフィクション「球界地図を変えた男 根本陸夫」(共著)等を執筆