9月16日、大阪市で行われた世界ボクシング評議会(WBC)スーパーバンタム級タイトルマッチは感動的な一戦だった。挑戦者の長谷川穂積(真生)が劇的な9回終了TKO勝ちで日本人最年長の35歳9カ月で王座を奪取。国内ジム所属選手では5人目となる3階級制覇を達成した。

バンタム級で揺るぎない時代を築いた男の快挙。だからこそ長谷川の今後に大きな注目が集まる。現役続行か、それとも勇退か。

試合前、長谷川は「負ければ引退」を公言していた。さらに、もし勝っても内容によっては引退に踏み切る可能性も高かった。まさに瀬戸際の状況での世界挑戦だった。

戦前の予想も厳しいものがあった。しかし、本人の闘志は全く衰えず、「必ずもう一度、世界をつかむ」とリングに上がった。実は8月初めに左手親指を脱臼骨折していた。そのハンディをも強い意志で乗り越えた。恐るべき精神力に脱帽するしかない。

抜群の実績が輝いている。2005年、WBCバンタム級王座を獲得し、10度の防衛に成功。スピードあふれる左右連打で世界的にも評価が高かった。

11度目の防衛に失敗すると、一気に体重を上げ、WBCフェザー級王座を奪い、2階級制覇。だが、11年4月に王座を失い、その後は常に周囲から「引退」の声がささやかれていた。

12月には36歳になる。今後についてはさまざまな意見があるはずだが、個人的にはこのままグローブを置いてほしいと思う。

全力投球でのフィニッシュ。今回の試合で「完全燃焼」という言葉が浮かんだからだ。

今後については長谷川の決断次第だ。じっくり考え、悔いのない道を選んでもらいたい。ヒーローの引き際ほど難しい選択はないといわれている。それだけに長谷川が導き出す結論が興味深い。

海の向こうでは6階級を制覇したスーパースター、マニー・パッキャオ(フィリピン)が戻ってくる。4月の試合を最後に引退を発表したが、わずか7カ月後の11月5日、世界ボクシング機構(WBO)ウエルター級王者ジェシー・バルガス(米国)に挑戦する。

5月、フィリピンの上院議員に当選し、政治活動に集中するとしていた。

しかし、「ボクシングが自分の主な収入源。公人としての給与に頼ることはできない。多くの人が自分に助けを求めにくる」と復帰の理由を説明している。これもまた、一つの決断である。(津江章二)