近年、この季節になるとJリーグの風物詩になりかけていた、J1浦和の失速。今年はその展開に、どうも変化が起こっているようだ。

それを予感させたのは9月25日のJ1第2ステージ第13節。ペトロビッチ監督の古巣である広島との一戦だ。多くの決定的なピンチを迎えながらも、無失点で切り抜け3―0の勝利を収めたことで、今年の浦和は違うということを示した。去年までの勝負弱さが姿を消し、逆に勝負どころを心得たチームへの成長を感じさせた。

シーズンの残り4試合に限ってみると、浦和は過去3年間の全12試合で3勝3分け6敗。リーグ終盤までは優勝争いに加わるチームとしては極端に悪い結果だ。それが「勝負弱い」という不名誉なレッテルを貼られる原因となった。

そのような中、迎えた1日の第14節。年間勝ち点2差で首位・川崎を追う形で対戦したのがG大阪だった。

ここ数年、浦和が崩れる契機を作り出すタイミングで当たる因縁の相手がG大阪だ。くしくも昨年の第14節で対戦したのも同じ。ここで1―2の敗戦を喫した浦和は、チャンピオンシップ準決勝、天皇杯決勝、そして今シーズンの第1ステージと、ことごとく大切な試合で負け続けた。そして振り返ると、G大阪に手玉に取られ公式戦4連敗。その負け方を考えれば、浦和には間違いなく「ガンバ・アレルギー」というものがあったはずだ。

「赤」と「青」の対戦。過去にこのカードの試合後に繰り返されたのが「内容ではうちのほうが上回っていた」という浦和・ペトロビッチ監督の言葉だ。事実、内容を見ればその通りなのだ。ただ、このスポーツは判定で勝敗が決まるものではない。愚直に攻め続けた正直者の浦和が、狡猾(こうかつ)なG大阪のカウンターというわなにはまって決着がつくというシーンを何度も目にしてきた。

同じ過ちを繰り返してきた浦和が、この大一番をどう戦うのか―。結果からいえば、今年の浦和は誰が見ても成長した。そして、強いチームであることを証明したといっていい。

大きな変化の一例が柏木陽介だろう。これまで汚れ役というイメージのなかった技巧派が、驚くほどのハードワーカーに変身した。G大阪の長谷川健太監督も浦和の守備について漏らした感想が象徴的だった。「ダブルボランチが2枚、柏木と阿部(勇樹)が来たのは想定外だった」という言葉だ。チーム全体で意思統一された、相手に考える暇を与えないプレス。4点を奪って浦和の攻撃にスポットライトが当たった試合にあって、G大阪に攻撃の形を作らせずシュートをわずか3本に抑えた守備は見事だった。

タレントがそろっているからできるのだろうが、日本では珍しい3―4―3システムで展開されるサッカー。守備に回れば5バックもあるが、攻撃に出たときの人数の掛け方は、正直わくわくさせるものがある。さらにこのチームには日本サッカーから消えつつある、ドリブルで勝負のできる純粋なサイドアタッカーがいるのも魅力だ

G大阪戦では関根貴大が出場停止だった。その代わりに存在感を示したのが、今シーズンJ2京都から加入し、8月以降先発の増えた駒井善成だ。スピード変化と巧みなコース取りのドリブルで、相手守備陣を翻弄(ほんろう)した。

さらにこの駒井と前方の武藤雄樹、攻め上がるストッパーの森脇良太で作る右サイドのトライアングルの関係が、この試合では絶妙のハーモニーを奏でた。そして右サイドで作り出したチャンスを、左サイドの選手たちが決める。高木俊幸、宇賀神友弥、李忠成をポストにしたズラタンが次々と決めた美しいゴール。それは右からのクロスが起点だった。

DFの視線がサイドに向けられれば、背後から侵入するFWはフリーでシュートを狙える。だからサイドからの攻撃が有効だと、サッカーをやる者なら誰もが言葉でわかっている。だが、それを実践しているJリーグのチームは考えるほど多くはない。その意味でこの日の浦和は、サイド攻撃の有効さを改めて証明したといっていいだろう。

さらにこのチームの強みは、ボランチの位置に巧みなパス出しを見せるレフティがいることだ。その柏木は「周りも見えていて、簡単に使うところと狙うところの使い分けができている」という。ピッチ中央から左足でパスを出しやすいエリア。それは右サイドになる。そこに突破力のある駒井や関根というサイドアタッカーを持っていれば、戦術として得点の可能性は広がるのは当然のことだ。

今年の浦和の選手たちからは、ここ数年になかった落ち着きが伝わってくる。それは持ち味の攻撃力に守備の安定感が加わったことによる自信からくるものか。いずれにしろ、今年の浦和はタイトルに値するチームなのではないだろうか。

岩崎龍一(いわさき・りゅういち)のプロフィル サッカージャーナリスト。1960年青森県八戸市生まれ。明治大学卒。サッカー専門誌記者を経てフリーに。新聞、雑誌等で原稿を執筆。ワールドカップの現地取材はブラジル大会で6大会連続となる。