サッカー日本代表の本田(ACミラン)をはじめ、長友(インテル・ミラノ)香川(ドルトムント)岡崎(レスター)ら主力の多くが、今季は所属クラブで出場機会が限られている。代表選手でありながらクラブで出番に恵まれない外国人は、Jリーグにもいる。清水エスパルスのDFヤコビッチはカナダ代表の中心選手でありながら、今季は10月第1週終了時まで、J2で出場がわずか1試合にとどまっている。来日3年目のセンターバックは「こんなに厳しいシーズンになるとは思わなかった。難しい状況が続いてフラストレーションはたまるけれど、前を向くしかないからね」と、黙々と日々の練習に取り組んでいる。

加入1年目の2014年は188センチの恵まれた体格を生かし、対人プレーの強さを武器に清水のJ1残留に貢献した。昨季はけがの影響で出場は減ったものの、J2に降格したチームとの契約を更新。だが、小林監督が就任した今季は評価が一変。スケールが大きい反面、粗削りで力任せになりがちなプレースタイルが指揮官の戦術に合わずにポジションを失った。「正直、直接は話していないが、開幕前から監督の構想には入っていないと感じていた。新しい監督が来れば、使われる選手も変わるのは仕方ない。気持ちだけはポジティブに持とうと努めてきた」と苦しい胸の内を明かす。

一方、カナダ代表では3月から国際Aマッチに毎回招集され、クラブとは対照的に不動の地位を確立している。特に3月のワールドカップ(W杯)北中米カリブ海予選では強豪メキシコとの2試合にフル出場。ともに敗れたがホームで5万4千人、アウェーでは6万4千人の大観衆の前でプレーした。それでも日本に戻ればJ2でベンチ入りすらできず、実質「2軍」の一員として大学生との練習試合などをこなしてきた。

4月にはチームで最も仲の良い、元オーストラリア代表のFWデュークが膝に全治6カ月の重傷を負い、手術のために母国へ戻った。「いつも一緒に過ごしていた友人がいなくなったのもつらかった。周りには英語を話せる人が少ない上に、僕の日本語もお世辞にも上手とは言えないから…」と、ピッチ外の不運も重なった。環境を変えるために他クラブへの期限付き移籍の可能性も探ったが、実現しなかった。

逆風続きでモチベーションを保つのが難しい状況でも、決してくさることはない。「不満を抱える外国人選手が文句を言ったり、チームの和を乱したりすることは珍しくないが、そんなことをしても誰も得をしない。いつ(チームメートの)負傷や出場停止で自分に出番が回ってくるか分からないし、出た時に活躍すれば状況が変わることだってあり得る。僕はそういう考え方をする性格なんだ」と強い信念を口にする。

8月27日に行われた関大との天皇杯全日本選手権1回戦で3カ月ぶりに公式戦で起用されたが、失点に絡んで小林監督も「軽いプレーを見せてしまった」と苦言を呈した。J3大分との3回戦もベンチ入りしたが、1-0の終盤に守備固めで投入されたのがチーム最長身のDFではなく、MF杉山浩だったことが今季の厳しい立場を象徴していた。

現実的に来季も契約を更新する可能性は低い。「サポーターは素晴らしいし、このクラブのことが本当に好き」と愛着を口にする一方で「ほとんど公式戦に出ていないので、来年も残ることは難しいだろう」と覚悟している。思えば1年目に慣れない右サイドバックを任された時も、不満を見せることなく適応した。冷遇されてきた今季も「コンディションはここ数年で一番いい。まだまだ貢献できると思う」と希望は失っていない。31歳と若くはないが、どんな状況でも高いプロ意識を持ち続けられる精神力があれば、この先も長く第一線を走り続けるだろう。

田丸 英生(たまる・ひでお)1979年生まれ、東京都出身。共同通信名古屋、大阪運動部を経て、09年12月から本社運動部でサッカー、ボクシングを中心に取材。Jリーグはこれまで名古屋、G大阪、鹿島、柏、浦和、清水などを担当。