評価というものは、何を目的にしているかによっても変わってくるものだ。それを考えれば、ハリルホジッチ監督の率いるチームの目指しているものが、時々わからなくなることがある。

2018年ワールドカップ(W杯)ロシア大会の出場権をかけた、アジア最終予選の真っただ中にいる日本代表。「サムライブルー」の視線の先にあるのは、ロシアの地に立つことなのか。それとも、ロシアの地で勝利を積み重ねることなのか。

2年前のW杯ブラジル大会に臨んだ日本代表の主力は、現在とほとんど同じだった。彼らの多くは「W杯で優勝することが目標」と公言していた。さすがにブラジルでは、“世界"に跳ね返され、現実の厳しさを思い知らされた。それだけに今回は「W杯で優勝」という言葉を軽々しく口には出せないだろう。それでも選手たちは、W杯の本大会で勝つという志は失っていないはずだ。

とはいうものの、近ごろの日本代表の試合を見ていると、「W杯出場が目標では」と思ってしまうほどひどい内容の試合が多くなっている気がする。

1日のUAE(アラブ首長国連邦)戦。1―2で敗れた試合では、22本のシュートを放ちながらも、得点はわずかに1点。この決定力の低さでは、一度の誤審に結果を左右されてもしょうがないだろう。そして、勝利を収めた6日のタイ戦でも2点を奪うのに要したシュートは21本。2試合で43本のシュートを放ち、わずか3得点。これでは、あまりにも効率が悪すぎる。

そもそも、W杯の本大会で日本がこれほど多くのシュートを打つなどということは、まずあり得ない。だからこそ、どのような試合でもシュートをゴール枠に入れ、ネットを揺らす確率を追求しなければならない。

相手との力関係にかかわらず、フィニッシュにおける最大の敵は「妥協」だ。大舞台でワンチャンスを決め切る勝負強さとは、手を抜かない厳しさの繰り返しだけで得られる技術ともいえる。その意味で“キング"三浦知良の日本代表での決定率は見習うべきだろう。

W杯におけるアジア地区の立場はかなり微妙だ。欧州や南米のように地区予選の戦い方を、そのまま本大会に持ち込むことは不可能だからだ。アジアでは一方的に攻めまくったチームが、本大会では逆に守備一辺倒の展開に持ち込まれる可能性もある。

W杯本大会では割り切って、アジア予選と戦い方を変えればいいという意見もある。ただ、これだけ日本代表のメンバーに海外組が占める割合が増えると難しい。練習期間が限られる状況では、予選で本大会を戦うためのベースを築いていくのが現実的だ。

UAE戦とタイ戦でコンティションは多少違っただろうが、日本代表に大きな変化はなかった。1―2の敗戦と2―0の勝利という結果の違いは、対戦相手の実力の差が出ただけだ。ある程度の実力があったUAEに比べれば、タイは弱かったというだけだろう。

ただ、タイ戦の勝利は2―0という数字以上にかなりの危うさをはらんだものであったことを忘れてはならない。原口元気が前半18分に先制点を奪ったあとに、一方的に攻めながらも追加点を挙げられなかった。そのふがいなさへ“天罰"が下る可能性もあった。

後半26分、チャナチップのスルーパスに反応したティーラシンの独走。吉田麻也が一発で背後を取られたプレーで、シュートを決められていたら1―1の同点だった。完全アウェーなだけに、あのゴールが決まっていたら、その後の展開がどうなっていたかは予想できない。それを考えれば、UAE戦では自らのミスで同点FKを決められたGK西川周作のシュートブロック。あのセーブがこの試合の勝利を得る大きなポイントだった。

主力メンバーが10年南アフリカ大会から2度のW杯を経験している現在の日本代表。進化したかと問われれば、個人的にはそうは思わない。遠藤保仁が抜けた穴が思いのほか大きいのだ。チームの中に試合展開の先を読み、チーム全体をコントロールできるクレバーな選手がいないというのが現状だ。

本田圭佑や香川真司といった高い技術を持つ選手はいる。ただ、彼らが本領を発揮するのは、あくまでも局地戦なのだ。遠藤のように上空からピッチ全体の状況を把握する「眼」を、彼らは持ち合わせていない。

遠くにあるスペースを見つけ出せる選手がいない。だから、攻撃が一方のサイドに偏る。試合中にハリルホジッチ監督が「サイドチェンジ」と叫ぶ場面をよく目にする。だが、その指示は相手にも伝わるのだ。サイドが限定されれば、相手が守りやすいのも当然だ。

日本代表の決定力の低さ。その最大の要因は、香川を筆頭とした選手たちの絶望的なシュート下手にある。さらに攻撃のバリエーションも限られている。思い浮かぶ要素を考えてみると、格下相手に接戦となるのはある意味で当然のことなのかもしれない。

岩崎龍一(いわさき・りゅういち)のプロフィル サッカージャーナリスト。1960年青森県八戸市生まれ。明治大学卒。サッカー専門誌記者を経てフリーに。新聞、雑誌等で原稿を執筆。ワールドカップの現地取材はブラジル大会で6大会連続となる。