熱狂の中、日本は史上最多となる41個のメダルを獲得して、リオデジャネイロ五輪を終えた。4年後の東京オリンピックに向けて、日本のスポーツ界はさらなる盛り上げを見せることは間違いない。中でも、陸上のリレー選手はこれまでになく注目されるに違いない。なぜなら、従来はメダル獲得が難しいと見られていた400メートルリレーで、最強のジャマイカを脅かし、アメリカに競り勝って(アメリカはバトンパスミスで失格)銀メダルを獲得し、日本人アスリートでも世界水準で戦える力があることを証明したからだ。

しかし、こうした熱狂はある種の「慣れ」を生むことも事実だ。今後はどの競技でも世界を争うレベルでなければ、人々の反応は薄くなってしまう。この問題に悩まされているのが、1980年代から90年代に掛けてF1や世界ラリー選手権(WRC)などを席巻したモータースポーツの世界かもしれない。国内のモータースポーツを始め、世界に胸を張るレベルにあっても、F1や世界耐久選手権(WEC)といったトップカテゴリーにしかニュースバリューがなく、さらにそこで活躍する日本人がいなければ、カテゴリー自体に目を向けられることがないからだ。

そんな状況を打破する可能性を秘めているのが、小林可夢偉以来となる日本人F1フル参戦ドライバーを目指している松下信治と福住仁嶺。22歳の松下はGP2、19歳の福住はGP3に参戦している。現在、松下はドライバーズランキング12位、福住も同8位と、シリーズチャンピオンを争うレベルには達していない。だが、松下は第2戦モナコ第2レースで勝利、福住もデビュー戦のスペイン第1レースでいきなり3位に入るなどトップを競う片りんはすでに見せている。

そして、彼らが本当に日本に熱狂を呼ぶために不可欠なのが、F1におけるホンダの復活だ。現在、製造者部門10位のマノーは二つのシートをメルセデスの育成ドライバーが獲得。完全にメルセデスのBチームとなった。そして、トロロッソがレッドブルのBチームなのは誰もが知る事実。つまり、ホンダが早くBチームを獲得し、そこに才能ある若手日本人を送り込むことが、今後を見据える上で重要だろう。2001年に東京・赤羽に国立スポーツ科学センターが開設されたことで日本のアスリートレベルが向上したように、F1でも選手の可能性を見極め、成長させるためのBチームが必要ということだ。

果たして、彼らが20年東京オリンピック開催のころ、F1で勝利を争うレベルに達しているのかは、誰にもわからない。だが、現時点ではもっともその可能性を秘めた2人を応援し、よりホンダのサポートが厚くなるよう、一般の人々にも松下信治と福住仁嶺というドライバーのことを知ってもらいたい。(モータージャーナリスト・田口浩次)