ボクシングの世界で、アンタッチャブルレコード(絶対に破られない記録)とまで表現されていた大記録の一つが塗り替えられつつある。

世界ミドル級の3団体王者ゲンナジー・ゴロフキン(カザフスタン)は9月10日、ロンドンで国際ボクシング連盟(IBF)ウエルター級王者ケル・ブルック(英国)相手に17度目の防衛戦を行うが、これまでの防衛戦はすべてKO勝ち。もしブルックをKOで下せば、スーパーバンタム級の名王者ウイルフレド・ゴメス(プエルトリコ)が樹立した17連続KO防衛の世界記録に並ぶことになる。敵地での試合というハンディを乗り越え、果たして快挙は達成されるのか。

ゴロフキンの強さは群を抜いている。安定したオーソドックススタイルから左ジャブ、左右フックでリードを奪い、KOのチャンスには一気にたたき込む。左右ともに一打必倒の威力があり、顔面からボディーへの打ち分けも巧みだ。

欠点はほとんど見当たらず、無人の野を突っ走るような無敵の強さを誇っている。今回の相手は2階級下とはいえ、デビュー以来、36連勝(25KO)の記録を持つパンチャー。しかし、「体格面で勝るゴロフキン有利」というのが大方の予想のようだ。

34歳のゴロフキンはアテネ五輪ミドル級銀メダリスト。345勝5敗のアマ実績があり、2006年5月のプロ転向以来、KOの山を築いてきた。

19戦目で世界王座を獲得、その後は試合のたびに評価を高めた。ここまで35戦全勝(32KO)。長いミドル級の歴史の中でも、トップクラスの実力者といえるだろう。ゴメスの記録に追いつけばその存在感は揺るぎないものとなる。会心の勝利を飾りたいところだ。

記者会見でゴロフキンは「ブルックは私にとって大きなテストになる。彼は偉大なボクサーであり、油断は絶対に許されない」と気を引き締めたが、表情には余裕が感じられた。

一方、ブルックは「ウエルター級のスピードで勝負を挑みたい。相手は素晴らしいチャンピオン。全力で戦うだけだ」と闘志をのぞかせた。無敗同士の大物対決。スリリングなKOシーンは必至と見られ、注目度は日に日に増している。

「タイトルは奪うより守る方が難しい」。これはボクシング界の有名な言葉だが、ゴロフキンのようにKO防衛を続けるのは至難の業である。歴史の一ページを刻むことができるか。ゴングが待たれる。(津江章二)