「内容に関しては、特に前半は今季のワーストだった」

試合をそのように振り返ったJ1柏の下平隆宏監督。その出来の悪かったチームに、FC東京は0―1で敗れ去った。

J1第2ステージ第4節。味の素スタジアムでの試合だった。

確かに、主導権を握り続けたチームが結果として敗れ去るという試合をサッカーではたまに目にする。先日の欧州選手権(ユーロ)準決勝のフランス対ドイツがいい例だろう。

それと同じ感覚でFC東京・城福浩監督の次の発言を聞くと違和感を覚えた。「内容と結果が一致しない現状を乗り越えなければいけない」。その中の「内容と結果が一致しない」という言葉だ。なぜなら、この試合の両チームには多少の優劣こそあったが、勝敗を分けるほどの決定的な差はなかった。サッカーではよくある展開だ。FC東京は「内容がそれほどでもないから、負けたのだ」と思ったのだ。

ところが、FC東京を見続けている友人は「今日の内容はいいほうだよ」という。近ごろは同じ90分を過ごすなら見ていて楽しい方を、ということで等々力競技場に足を運ぶ回数が増していた。J1川崎の楽しい試合に慣れっこになって、久々に味スタに足を運んだら、正直退屈してしまった。

サッカーにおいて「顧客満足度」を高く保つことは、かなり難しい。その道筋を導き出すのが監督となるのだが、指導者の人選はクラブ側にある。だから、クラブとしての哲学が一貫しているところは、選手の質によっての多少の浮き沈みはあるが、安定した品質が期待できる。その好例が鹿島だろう。

楽しい内容のサッカーで勝つ―。どのクラブもできることなら目指したい。ところが相手との力関係があることなので、これができるチームは限られてくる。その次の選択肢は次の二つだろう。結果はある程度、度外視しても観客の喜ぶサッカーなのか、それとも観客には多少のつまらなさを我慢してもらっても結果を重視するのか。

昨シーズンのFC東京は、後者だった。イタリア人監督マッシモ・フィッカデンティに率いられた守備重視のチームは、リーグ3番目の失点の少なさで年間順位4位を獲得した。一方、攻撃はというと第1ステージは武藤嘉紀の決定力頼み、第2ステージは太田宏介のセットプレー頼み―という印象しかなかったのも事実だった。

冷静に見てあのサッカーが楽しいかと問われれば、困ってしまう。それでも試合後にサポーターたちの間で酌み交わされたであろう「勝利」という妙薬の利いた美酒は、胸にわだかまる不満を洗い流すに十分だったはずだ。

ところが、今シーズンのFC東京は内容も結果も欠けるチームとなった気がする。きつい言葉でいえば、何を目的にサッカーをやっているのかが見えてこないのだ。

後半13分に柏の伊東順也に先制点を許して迎えた終盤。1点を追うFC東京は、残り18分の時点で190センチの長身ストライカー平山相太を投入した。この交代を見て、スタンドのFC東京のサポーターの誰もが、なにをするべきかを理解したはずだ。

だが、日本のサッカーでは時としてまったく理解不可能なことが起こる。さらにプロのJリーガーであっても、「本当にサッカーを分かっているの?」と疑問になるときがある。それがこの試合だった。主に左サイドからの攻撃が多かった終盤、室屋成やムリキがボールを持ってもゴール前の平山にボールを入れるそぶりがまったく見えない。ただ、いたずらに無意味なパスのやりとりを繰り返すだけなのだ。

何をすればいいのかが分かっていない。その最たるものが、途中出場の河野広貴のプレーだ。CKキッカーも任される左利きのアタッカーは後半37分とロスタイムに入った後半48分に、左サイドからフリーでクロスを入れられる2度の絶好のチャンスがあった。しかし、選択したプレーは無意味な切り返しからの味方へパスだ。1度目はペナルティーエリアに味方が6人も入り込んでいたのに、思慮のかけらも感じられないプレーでチャンスをつぶした。

レフティが左サイドからボールを入れれば、GKから遠ざかる軌道を描く。攻撃側は自分にボールが向かってくるわけだから、ヘディングがしやすい。それを右利きの選手にパスを出すというのは、むざむざと利点を放棄することだ。高さの優位性を得るために投入された平山を無視するプレーとともに、このようなことが許されるのは大きな疑問だ。選手が監督の指示に反しているのか、それとも監督が練習中にセオリーを伝えていないのか。どちらにしても疑問は膨らむばかりだ。

試合後に味スタのゴール裏のサポーターから浴びせられるブーイング。その怒りの根源はゴールを奪いに行くそぶりさえ見せなかった選手たちへの失望感だろう。その意味でFC東京は、サポーターの方がサッカーという競技の本質を分かっているのかもしれない。

岩崎龍一(いわさき・りゅういち)のプロフィル サッカージャーナリスト。1960年青森県八戸市生まれ。明治大学卒。サッカー専門誌記者を経てフリーに。新聞、雑誌等で原稿を執筆。ワールドカップの現地取材はブラジル大会で6大会連続となる。