どのスポーツでも大きく注目されるのが、「ストーブリーグ」と呼ばれる選手の移籍にまつわる話題だ。F1の場合、水面下での動きは5月に開催されるモナコGPの前後にスタートするとされていて、例年はチームが夏休みを終えた9月ごろを境にウワサ話が表舞台に上がり一気に活発化していく。

ところが、今年は早くもストーブリーグが“開幕"した。フェラーリが8日、キミ・ライコネンと1年間の契約延長したことを発表したのだ。この発表後、フェラーリ移籍に向けて下交渉しているとうわさされていたドライバーの契約延長や、将来のフェラーリ入りを意識した発言が相次いだ。フォースインディアのセルヒオ・ペレスは、2017年シーズンまで契約を延長。そしてハースのロマン・グロージャンはライコネンの契約延長を「歓迎」した。この2人は、どちらもフェラーリ入りを狙っていることを公言しており、ライコネンの契約が切れる18年シーズンへ名乗りを上げたものと周囲は捉えている。

だが、フェラーリの本命はすでに別にいるというのがもっぱらのうわさだ。それが、同じく18年にフリーとなる史上最年少優勝ドライバー、レッドブルのマックス・フェルスタッペンだ。実はフェルスタッペンが今季序盤に兄弟チームのトロロッソから「昇格」できた裏側には、14年末の契約時に2年以内に昇格がなければ、チームを離れることができる、というパフォーマンス条項を組んでいたからだとされている。F1における3年契約は、実は「2年契約プラス1年オプション」であることが多い。プラス1年はチームに契約の更新権がある代わりに、ドライバーにはパフォーマンス条項で、自身が求めるレベルにチームがない場合は契約を破棄できる権利を加えることが一般的になっている。

ルーキーイヤーだった昨季、4位を2度記録するなどフェルスタッペンが才能を示したことで、もし今シーズン中にレッドブルへ移籍できなかった場合はパフォーマンス条項を盾にフェラーリへ移籍する可能性が出てきた。そこで、流出を恐れたレッドブルは異例とも言えるシーズン中の昇格で17年シーズンまでの契約を守った。それに呼応してフェラーリはライコネンと1年だけ契約を延長したというのだ。

このフェラーリとレッドブルによる駆け引きによって最も利を得るのは、フェルスタッペンだろう。今後、メルセデスも争奪戦に加わるという話もある。潤沢な資金を誇る3チームだけに、どこまで条件がつり上がるのかは想像もつかない。今回のライコネン契約延長発表は、実は来季だけではなく1年半も先になる18年シーズンのストーブリーグ開幕をも告げるニュースなのである。(モータージャーナリスト・田口浩次)