「例えば、混んでいる日とすいている日の遊園地の料金が同じ。これ、納得できませんよね」。そんな考え方から、プロ野球のソフトバンクがこのほど福岡市の本拠地ヤフオクドームでの主催試合に限り、一部の座席料金を天候や対戦相手などに応じてリアルタイムに変動させる試みを始めた。原理としては、雨で客足が鈍りそうな日には価格が安くなり、日本ハムの大谷翔平投手との対戦など注目度の高い試合は上がる仕組み。まだ、対象は1試合で100席程度だが、今後この販売方式が拡大する可能性もあり、一人のプロ野球ファンとしても、大いに注目している。

チケットは球団と同じソフトバンクグループのヤフーが運営する電子チケットサービスで購入できる。過去数年の売れ具合を座席ごとに分析して値段を設定。従来は同じ価格の指定席もグラウンドに近い前の列と後ろの列で料金を変え、今後は試合開始後も展開に応じて値段を変化させていくという。

変動制を始めた背景には、収益をより高めたい事業者側の狙いがある。ソフトバンクは昨年、2年連続の日本一を成し遂げ、主催試合の1試合平均集客数3万5221人は12球団で巨人、阪神に次いで3番目に多かった。ヤフオクドームの収容人員が3万8500人という点などを考えると、毎試合90%以上の座席が埋まっている計算になる。ただ、人気の高い週末の試合のチケットがネットオークションで高額な値段で転売されてしまうなど、収益という面で課題がないわけではない。価格変動制はこうした課題を解決する糸口として期待されており、ヤフーの稲葉健二チケット推進部長は「本来あるべき市場価格に近い値段で販売でき、事業者に適正な売り上げが入る。それによってサービス向上にもつなげられる」と意義を強調した。

では、買う側にはどんなメリットがあるのか。そんな声がファンから聞こえてきそうだが、稲葉部長は「人気の対戦カードであっても、法外な値段にはならない」と説明。さらに「仮に高くなる場合でも、少し多くのお金を出していただければ好きなチケットを手に入れやすくなる。買える座席も細分化され、お客様の選択肢も広がる」と利点を挙げた。6月29日のロッテ戦を観戦した会社員の男性(52)も「面白い企画。この方法なら、あまり集客が見込めない時でも柔軟に価格を下げて客を入れられる。どんな試合でも満員の方が球場の雰囲気がいいし、選手もうれしいのではないか」と評価していた。

同じパ・リーグの楽天は「フレックス・プライス」と銘打ち、仙台市にある本拠地の楽天Koboスタジアム宮城のホームゲームを試合ごとに5段階に格付けし、ランクに応じた価格で各種座席を販売している。さらに米大リーグでは、日本より電子チケットが普及しているため、ソフトバンクが試しているような販売方法が定着しつつあるようだ。にわかに球界に広がりを見せる価格変動方式。日々変化する需要の大きさに応じて料金を変えるスタイルは、既に宿泊施設や航空券でおなじみになっている。プロ野球のチケットを「定価」で買うことが「時代遅れ」と言われる日が来るかもしれない。

岩田 朋宏(いわた・ともひろ)1989年生まれ。東京都出身。2013年共同通信入社。大阪社会部を経て14年12月から大阪運動部でプロ野球を取材。15年12月に福岡運動部に異動し、ソフトバンクやサッカーなどを担当している。