Jリーグに特定のひいきチームを持たないサッカーファンの目は、この時期海外に向けられているのだろう。現在、フランスでは欧州選手権(ユーロ)、米国では南米選手権(コパ・アメリカ)と、それぞれの大陸王者を決めるビッグイベントが行われている。

1次リーグでブラジルが敗退するなど、メンバー編成も含めて必ずしも本気度が定かではないコパ・アメリカ。この大会はいつもながら優勝チームが決まらなければ、大会の質そのものが評価できない。それとは異なり、ユーロの品質は常に保証されている。大会に臨むチームの真剣度はかなり高いからだ。

ユーロは今大会から参加国が16チームから24チームに増えたものの、心配されたレベルの低下は感じられない。アジアなど実力が劣る地域からの参加国がないだけ、試合内容の水準は確実にワールドカップ(W杯)より高い。すでに全チームが初戦を終えたが、日本より劣るのではないかと思われたのは北アイルランドぐらい。主要大会への出場は初めてとなる人口33万人のアイスランドでさえ、ポルトガルを相手に引き分けた。試合で得た勝ち点1は正当な報酬だったといえる。

そのような中、日本国内のサッカーシーンに目を移すと、少し地味な印象だ。現在J1では第1ステージのタイトル争いが大詰めに差し掛かっているが、どれだけの人たちがそのことを認識しているのだろうか。世間から伝わってくる雰囲気では、Jリーグは一切無視されているというのが正直なところだ。

最大の理由は、ステージ優勝の重みのなさだろう。本来年間で争われるはずのリーグ戦のタイトルが二つのステージに分散された。しかも、チャンピオンシップではステージ優勝より年間勝ち点が重視される。このことを踏まえると、ステージ優勝の価値は従来のリーグ優勝の半分以下だ。もちろん優勝するに越したことはない。しかし、チャンピオンシップという不確定な不安要素を後に残していれば、選手は心から笑えない。選手が笑えないものに一般の人は関心を示さないのだ。

加えて、もっと重要なことがある。優勝争いを演じているチームの試合消化数が違うのだ。15日時点で3位浦和が14なのに対して、1位川崎と2位鹿島は15。浦和がアジアチャンピオンズリーグ(ACL)に出場したためだが、興味が薄い人々には理解しづらいだろう。上位を争うチームはACL出場の可能性が高いので、ある程度は仕方が無いのかも知れないが、ステージ終盤でこうだと優勝争いが盛り上がらないのもうなずける。

影の薄いJリーグ。そのなかで唯一の救いは、まだ3チームのサポーターが優勝への希望を持っているということだ。その意味で11日に行われた浦和対鹿島の直接対決は、大きな意味を持つ一戦だった。

勝ち点30(9勝2敗3分け)で2位につける鹿島と27(8勝1敗3分け)で3位の浦和。この時点で残り試合数が2試合少ない浦和が勝てば、有利な展開となった。この試合の前に試合を終えた首位の川崎は勝ち点34(10勝1敗4分け)。それを自力で上回ることができたからだ。一方で鹿島は敗れれば、次節で優勝の可能性が消える場合もあった。リーグの盛り上がりを第一に考えれば、浦和を鹿島が下すことが望ましい展開だった。

開始から自分たちのリズムで試合を進めたのは浦和だった。鹿島には2010年3月以来、リーグ戦では11試合負けなし。その自信がどこかにあったのだろう。ところが勝負というのは、わずかな判断の違いで明暗を分ける。これはそういう試合の典型だった。

試合が動いたのは後半7分。相手陣内の左サイドで浦和・宇賀神友弥の単純な横パスがそれ、鹿島・カイオに渡ったのが発端だった。ここで前方のスペースに、弾かれたように走り出たのが鹿島の柴崎岳だ。一方でパスミスに気落ちした表情を見せた宇賀神の追走は、明らかにワンテンポ遅れた。足運びも全力ではなさそうに見えた。

「本気走り」の柴崎に「ちょっと手を抜いた走り」の宇賀神は、後ろから気配を感じさせるほどのプレッシャーも掛けられなかった。そして、右サイドでカイオからのパスを受けた柴崎は、ダイレクトでゴール前に。フリーでプレーさせれば、彼はパスの精度を落とすことはない。そのラストパスから決勝点を挙げたのは金崎夢生。「岳がいいボールをくれた。合わせるだけだった」という右足シュートで、劣勢だった鹿島に値千金のゴールをもたらした。

大一番の勝敗を分けたのは、サッカーに向き合う緊張感の違いだった。元日本代表監督の岡田武志さんは「サッカーの神様は細部に宿る」といつも言っていたが、それを証明したのが先制点の場面だろう。

鹿島にとって、後のない状況での2―0の完勝。川崎、鹿島、そして15日のG大阪戦に敗れたとはいえ優勝の可能性がいまだある浦和、と3チームが残ったことで、第1ステージの優勝争いの興味は最後まで保たれた。とはいってもちょっと話題性に欠ける。Jリーグのやり方は、このままでいいのだろうか。そう思う寝不足の日々だ。

岩崎龍一(いわさき・りゅういち)のプロフィル サッカージャーナリスト。1960年青森県八戸市生まれ。明治大学卒。サッカー専門誌記者を経てフリーに。新聞、雑誌等で原稿を執筆。ワールドカップの現地取材はブラジル大会で6大会連続となる。