モータースポーツのなかでも、長時間を争うレースを「耐久レース」と呼ぶ。長くても2時間程度で終わるF1のような「スプリントレース」と比較すると、とかく突発的なドラマが発生する機会が多いとされる。順調に走行しているように見えたのに突如、不調が起きて脱落していく姿、そしてトラブルを抱えてピットで数時間を過ごした後でも諦めずに再びコースに戻りゴールを目指す姿―。大の大人が泣いて、喜んだり悲しんだりする姿は、同じように長距離をチームで戦う陸上の駅伝と重なる。

今年84回目の開催となる伝統の「ルマン24時間レース」は、世界でもっとも有名な耐久レースだ。フランスのルマンで行われ、今年は18日午後3時(日本時間同日午後10時)にスタートする。そして、5年連続、18度目の挑戦となるトヨタからは、ともに元F1ドライバーである中嶋一貴(5号車)と小林可夢偉(6号車)がチームメートとして出場する。彼らがF1に挑戦していた時には実現しなかった夢のコンビだ。

そんな2人に現地のルマンで話を聞いた。

まずは中嶋に尋ねた。「夢のコンビ実現を期待されているのを感じたか?」

「そうですね、僕らは普段通りと言うか、そうした感じはないですね。お互いに子供のころから知っていますし」。中嶋が冷静に語る。そして、「もちろん、今年はマシンも良くなった手ごたえがあって、いい戦いができると思うので、そうしたファンの応援があることはうれしいです」と力を込めた。

続いて、小林に聞く。「レースファンじゃない人にルマン24時間レースとはどんなものと説明するか?」

「高速道路を走った経験がある人なら、きっとヒヤリとした事を感じた人がいると思います。高速道路では突然車線変更をする予測できない動きをするドライバーや速度差の違うクルマなどが一緒に走っていて、危険を感じる機会があります。さらに雨が降って視界が悪くなったりしますよね。そうした状態を最高時速340キロくらい出して走っているのが、ルマン24時間レースと思っていただけるとわかりやすいかもしれないです」。小林が丁寧に答えてくれる。

2人そろって同じ説明だったのは運転時のリスクマネジメント。遅いクルマを安全な位置まで待って追い越していくと、その分タイムが落ちてしまうため、リスクを冒して抜ける場所を探り、常に瞬時の判断を下すことを求められ続けるのだという。やはり、タフなレースだ。

いまだ長い歴史の中で実現していない、日本車での日本人総合優勝。果たしてこの2人が日本モータースポーツ界の悲願をかなえてくれるのか、ぜひとも注目していただきたい。(モータージャーナリスト・田口浩次)