成績はどうであれ、大きなトーナメントを戦ったチームというのは苦い体験のなかにも何かしらの光明を見いだすことが多い。例え、それがネガティブな材料であっても、結果としてチームを向上させるためのヒントを得るというのが普通だ。

ところが、リオデジャネイロ五輪の強化としてフランスで行われたトゥーロン国際大会に出場したU―23(23歳以下)日本代表からは、残念ながらプラス思考に成り得る材料を感じられなかった。4試合を戦って1勝3敗。明らかに格下のギニアには2―1の勝利を収めたが、下の年代となるU―21(21歳以下)パラグアイ、U―20(20歳以下)ポルトガル、そしてU―22(22歳以下)イングランドに敗れ去った。

大会中、故障でくしの歯が欠けるようにメンバーが抜けていき、最終戦のイングランド戦ではベンチに座るフィールドプレーヤーはわずかに4人。通常なら本大会を戦うためのスタイルを固めていく大切な時期にもかかわらず、駒不足でチームの実像がますます見えなくなってきたというのが正直なところだ。

大会中、気になった言葉があった。選手たちが繰り返していた「決めるところを決めていれば勝てた」というフレーズだ。確かにその通りなのだが、決められなかったから負けたというのが現実だ。

この年代はアンダーカテゴリーのアジア予選で、圧倒的にボールを保持しながらも1点に泣き、世界大会への扉を閉ざされてきた。ゴールを決めなければ痛い目に合うということは体験していたはずだ。その割には、過去の教訓がまったく生かされていない感じがする。ここまでくるとシュート意識の欠如は、もはや日本の“風土病"といえるだろう。

リオ五輪は約2カ月後に迫っている。なでしこジャパンが出場権を逃しただけに、手倉森ジャパンにはサッカー種目の日本代表としていや応なしに注目が集まる。ただ、年配の方には五輪がワールドカップ(W杯)の下に位置するカテゴリーの大会だということを認識していない人が案外多い。そんな「五輪が最強」と思っている人々に、若手選手で構成するチームだからといって恥ずかしい試合は見せられない。

胸のエンブレムは「日の丸」だけ―。サッカーの代表チームで、このデザインのユニホームを着用するのは五輪本大会に限られる。その意味で、五輪は国の威信を背負って戦う色合いが他の世界大会に比べても濃い大会といえる。

W杯という頂点を抱えるサッカーの特殊性。それもあり近年、五輪を「自分のサッカー人生の通過点」と表現する選手が多くなった。若い選手が将来的な展望と向上心を持つこと自体は素晴らしいと思う。しかし、歴代の五輪代表選手の全員が、チームのために能力の限界で必死に戦っていただろうか。必ずしもそうはいえないだろう。

日本のために戦えとはいわない。ただ、予選を一緒に戦い、本大会のメンバー外になった選手たちの思いも背負ってほしい。そうなれば、必然的に「チームのために」という集団への忠誠心は高まるだろう。

選手は結果を求めるのが当然だ。一方でスポーツを観戦する人が求めているのは、卓越した技術とともに選手たちが見せる「心の揺れ動き」だ。普段なじみのない種目に接する機会の多い五輪期間。ルールもよく分からない種目にもかかわらず心を動かされるのは、選手たちから国の名誉を背負う覚悟が伝わってくるからだろう。その意味で、人を感動させるのは技術よりも、むしろ競技に向き合う選手たちの姿勢ということになる。

物足りなさばかりが残った今回のフランス遠征。どんなメンバーで編成するにせよブラジルで戦うU―23日本代表がわずか2カ月で、技術面で飛躍的に成長することは不可能だ。一方で短期間に変えることができる要素もある。それは、日本に欠けている「戦う気持ち」だ。チーム全体の意識作り。それにはオーバーエイジで加わる選手のパーソナリティーが重要な意味を持ってくる。リオ五輪の成否を握っているのは、技術・精神両面でのリーダーとなるオーバーエイジといっても過言ではない。

勝負だから勝つに越したことはない。ただ、もし試合には敗れたとしても、手倉森ジャパンには人々の心に何かを訴えかけられるチームであってほしい。欧州チャンピオンズリーグ(CL)決勝で、レアル・マドリード(スペイン)に敗れたものの、勝者以上に強い感動を与えた“グッド・ルーザー"アトレチコ・マドリード(スペイン)のように。人の心を動かすチームというのは、そう簡単に作り出せるものではないが、18人の登録選手の気持ちが一方向に向いていれば、それは必ずしも不可能ではない。

そういえば、CL決勝でレアルのセルヒオ・ラモスが決めた先制点。あれは、オフサイドでしょう?

岩崎龍一(いわさき・りゅういち)のプロフィル サッカージャーナリスト。1960年青森県八戸市生まれ。明治大学卒。サッカー専門誌記者を経てフリーに。新聞、雑誌等で原稿を執筆。ワールドカップの現地取材はブラジル大会で6大会連続となる。