プロ野球は5月31日からセ、パ交流戦に突入した。

昨年のプロ野球は外国人投手らを中心とした「パワーあふれる投球」が威力を発揮して注目されたが、今年はここまでの戦いで目につくのは左腕投手の活躍だ。

特にセは全球団で左投手の勝ち星が目立つ。その左腕の実力がパ相手に通じるか、興味津々である。

今年で12年目を迎える交流戦は圧倒的にパの強さが際立つ。昨年などはその典型で、交流戦順位でパ球団が5位までを独占した。

セのチームが優勝したのは2012、14年の巨人だけ。交流戦の戦績がセの優勝争いを左右しているのは間違いない。

だからだろうか、セ主導で交流戦の試合数を減らしたが、交流戦は04年の球界再編騒動をきっかけに導入されたもので、定着しているといっていい。

▽DeNA浮上は左腕の活躍

今年活躍しているセの左腕投手を挙げると広島はジョンソン、阪神は岩貞、能見、中日はジョーダン、大野、巨人は田口、今村、ヤクルトは石川、成瀬ら。そしてDeNAの石田と今永は5月だけで各4勝を挙げ、出足で大きくつまずいたチームを勝率5割前後まで引き上げた原動力となった。

石田は法大からドラフト2位で入団して2年目。今永は駒大からドラフト1位で入った新人である。

▽東都大学リーグ時代

今永は開幕から4連敗したが、6試合で初勝利をつかむとあっという間に4連勝して先発ローテーションの一角を担っている。

今永は東都大学リーグ時代から見てきたが、正直ここまでやれるとは思っていなかった。球速は140キロ台と目を見張る速さではないが、直球の切れと変化球の鋭さで三振が取れる。ただ、スタミナ面でどうかと思っていた。

それと昨年痛めた左肩の状態が心配だった。4年生春は登板なし。秋に復帰したが、通算勝利数は3年生までの18勝止まりだった。

それでもDeNAに1位指名された後に行われた2部リーグの東洋大との入れ替え戦の第1戦でヤクルト1位指名の原との投げ合いに勝ち、12奪三振で完封勝ち。ただ、第3戦で3連投の原と再び投げ合ったが、六回途中で9失点だった。

この入れ替え戦に今永の長所と短所が見えた。体調万全なら三振の山を築き、スタミナ切れでは結構打たれるというパターンはよく見られたものだった。

登板間隔が取れるプロではコンディショニングの面でプラスだ。身長177センチとそう大きくはない体で、初めての夏をどう乗り切るかにかかる。

▽真正面から野球と向き合う

福岡の県立北筑高出身で甲子園出場もない今永は野球エリートではないが、常に真正面から野球と向き合ってきた。

それは言葉の端々に出てきた。「意味ある一球を投げようと思い続けている」「(肩痛からの)復帰登板ではなく、復活登板じゃないといけない。投げられるといった低い次元じゃ駄目」といった具合である。

そんな今永が「プロ志望届け」を監督に強く促され、締め切り2日前にやっと提出したことは彼の性格をよく表していた。

肩痛から復帰した秋のリーグ戦に思うように投げられず、チームに迷惑をかけたことを気にしてプロ入りを真剣に悩んでいた。

北九州の実家で家族に相談したのも、その頃だった。大学の仲間の期待に応えられず、自分だけプロへ行くことに後ろめたさを感じていたのである。

▽新人離れした受け答え

理路整然と話せる選手である。理屈っぽいという向きもあるが、この新人離れしたというか、正確に自分の考えを伝える言動はある意味「プロらしい」と思う。

“今永語録"を何個か拾ってみた。「エラーがあろうが、打線の援護がなかろうが、勝てないのは全て自分の責任」「きょうの勝利はたまたま。たまたまで勝ち続けることはできない。次回は『なぜ勝てたのか』ということをしっかり皆さんに説明できるようにしたい」「自分を客観的に見るようにする。例えばテレビの自分を見るようにすれば、このぐらいの点差なら四球を与えても慌てることはない」

今永は文句なしに面白い存在なのだ。

▽大学野球の投手

大学野球の投手は、独特だと思う。大学のリーグ戦は3試合(2勝先勝で決着)で勝ち点を争うのがほとんど。

エースは1回戦を投げ、中1日で3回戦に登板するパターンが通例で、一人の投手の連投が当たり前の高校野球や投手の駒をそろえた社会人野球とも違う。

こうして体力面で「鍛えられる」と同時に、変化球で投球の幅を広げないと勝てない。速球派だった投手が変化球投手に変貌するケースはざらにある。

即戦力と期待されながらプロで通用しないことは多々見られる。「まとまり過ぎる」のが裏目に出るからだろう。

▽東大・宮台の実力は?

大学野球は6月6日から大学日本一を争う全日本大学選手権が始まり、7月には日米大学野球が日本で行われる。その日本代表候補に東京六大学連盟から推薦されたのが東大の3年生左腕、宮台である。

今春は6試合に投げ1完封を含む4完投で2勝4敗。早大、明大戦ではともに八回まで零点に抑えながらサヨナラ負けした。

早大戦では東大で最多となる1試合13三振を奪った。他大学の監督は今後、真剣に宮台対策を練るだろう。

球速は145キロほどだが、チェンジアップが効果的。左腕を畳んで投げるフォームはタイミングがとりにくそうで空振りが多い。

がっしりした体の宮台だが、連投は利かないし、肩の痛みとも戦っている。今後の成長によるが、来年秋のドラフト候補になる逸材なのは間違いない。

東大出身では6人目のプロ野球選手になるのか、それとも現役合格し法学部在籍の秀才が違う道を選ぶのか。興味深い左腕投手である。

田坂貢二[たさか・こうじ]のプロフィル

1945年広島県生まれ。共同通信では東京、大阪を中心に長年プロ野球を取材。編集委員、広島支局長を務める。現在は大学野球を取材。ノンフィクション「球界地図を変えた男 根本陸夫」(共著)等を執筆