金曜日のナイトゲームをテレビ観戦し、翌日はスタジアムに足を運んだ。13日のFC東京対鳥栖と、翌14日の川崎対神戸の2試合を見て思ったのは、例え観客が同じように不満を覚えたとしてもチームの戦い方によって、その程度にかなりの差が生まれるのではないだろうかということだ。

確かにテレビ観戦と生の観戦では、臨場感がかなり違う。同じレベルの試合ならスタジアムで直に見た方が、試合の躍動感や選手の息遣いが感じられるので確実に楽しい。とはいえ、どうやってもつまらない試合というものはある。それはワールドカップ(W杯)のようなビッグイベントでも同様だ。

残念ながら、スコアレスドローに終わった金曜日の1戦はそういう試合だった。前半終了間際にFC東京・高橋秀人のシュートがクロスバーをたたいたのが数少ない見せ場。シュートはFC東京の8本に対し、鳥栖はわずか2本。こんな試合に出くわしたら、かなりのサッカー好きでも飽きてしまうだろう。そして、観客の不満を代弁するなら「もっとシュートを打てよ」ということになる。

そんな試合を見た翌日だったから余計に感じたのかもしれないが、川崎の試合は見ていて楽しい。人を飽きさせない娯楽感に満ちている。

この日も川崎は積極的に攻めた。だが、ゴールが遠い。逆に先制点を奪ったのは神戸だった。前半ロスタイムに渡辺千真が放った直接FKは、川崎の選手に当たってコースが変わりゴールへ。試合を通じて神戸が放ったシュートは、この1本だけ。神戸のネルシーニョ監督が「攻撃ができなかった」と認めたように、内容は一方的に川崎のものだった。

得点が入らなくても満足できる試合はある。前半の川崎は、まさにそれだった。しかし、どんなに素晴らしい内容でも、ゴールという興奮の瞬間があった方がいいに決まっている。そして、後半は内容とゴールという結果が伴った展開になった。

決めたのは、国内で最も頼りになる男だった。後半12分、小林悠がPKを獲得。これを大久保嘉人が左スミに冷静に決めた。同18分の2点目は技ありのループシュート。登里享平が浮き球で送ったラストパスにいち早く反応して、GKの頭上を抜いた。J1歴代得点記録を更新し続ける点取り屋は、自らのJ1通算出場350試合目という区切りの試合でゴール記録を165まで伸ばし、チームを暫定ながら首位に押し上げた。

守備側からすれば捕捉しにくい川崎のサッカー。その象徴ともいえる右サイドバックのエウシーニョが、今シーズン自身の4点目を決めて3―1の逆転勝利。他チームから見れば十分な結果だろうが、それでも川崎のサポーターは満足しない。そして漏れるのは金曜日の試合とは、明らかにレベルの次元が違うぜいたくな不満。決定機に「シュートをちゃんとゴールに入れろ」という要求だ。

神戸戦で川崎の2トップは、それぞれ6本ずつのシュートを放った。2人だけでFC東京対鳥栖の試合を上回るシュート数だ。しかも、その大多数がビッグチャンスと呼べるもの。その状況で2点を決めた大久保とは対照的に、小林は決定機を外しまくった。

それは「悲惨」と表現しても大げさではないほどだった。それを見かねた中村憲剛が小林を気遣ったプレーが後半41分に見られた。自らが得点を狙える場面にも「FWだし(得点したいという)気持ちが分かったからね」と右サイドでフリーだった小林にプレゼントパス。ところが、当の小林はまたもイージーなミス。訪れるチャンスを普通に決めていればハットトリックも難しくはなかった試合で、結局は無得点に終わった。試合後、小林はばつの悪そうな表情を浮かべていたが、これで勝利を逃していたら間違いなく戦犯扱いだっただろう。

12試合で26得点。1試合平均の得点が2点を超えているのは、リーグで川崎のみ。その意味で川崎と対戦した敵チームのサポーターには「自分たちのチームがこんなサッカーをやってくれたら」と思っている人も多いのではないだろうか。特にシュートに至る前段階のチャンスを作り出すことにさえ苦労しているチームは、川崎の組み立てのうまさに対して羨望のまなざしを向けているだろう。

川崎のサッカーは面白い。それはスタンドに幅広い年代の女性―中でも年配の方の姿が目立つことでも証明されているのではないだろうか。もちろん魅力的なイベントを開催するなど、クラブの地道な努力が実っていることは疑いないだろう。それでもサッカー自体がつまらなければ、一般的にサッカーと接してきた期間が男性に比べて短い女性は離れていきがちだ。その意味で現在の川崎というクラブは、魅力的なサッカーを基盤に、地元住民をはじめとしたサポーターたちとの理想的な関係を築いている気がする。

岩崎龍一(いわさき・りゅういち)のプロフィル サッカージャーナリスト。1960年青森県八戸市生まれ。明治大学卒。サッカー専門誌記者を経てフリーに。新聞、雑誌等で原稿を執筆。ワールドカップの現地取材はブラジル大会で6大会連続となる。