今季から日本にも導入された「コリジョン(衝突)ルール」が5月に入って1週間で2度適用され「アウト」が「セーフ」に変更された。

2試合とも試合の流れを左右する得点の場面で、攻撃側が有利になる想定通りの結果となった。

6日の西武―日本ハムの六回1死満塁で西武・高橋光が暴投。高橋光が本塁ベースカバーに入った際に一気に本塁を狙った二塁走者と接触した。

審判はタッチが早いと見て一度はアウトを宣告したが、ビデオ判定でセーフとなった。「コリジョンルール適用第1号」となったが、西武側からの抗議はなかった。

▽1週間に2度のルール適用

それから5日後の阪神―巨人の三回2死二塁。中前打で二塁から本塁を狙った小林誠はアウトを宣告されたが、捕手の原口が走路をふさいだとされ、ビデオ判定でコリジョンが適用されセーフになった。

ちょうどテレビ中継を見ていた。中堅手からの返球は捕手の正面に返ってきたが、ハーフバウンド気味で原口はそれに合わせ本塁ベース後ろに少し下がって捕球し脚にタッチした後、走者との接触を避けるように自ら左に転がった。自然な流れのプレーと見えただけに、これでコリジョンを適用するのは厳し過ぎると思った。

▽最初から走路を開ける?

審判側は「原口は最初から開けておかないといけない走路に立っていた」と説明したが、「最初から」とはどの時点なのか。走者が三塁を回った時なのか、三塁と本塁の中間ぐらいに来た時か。

捕手の巨人・小林誠は「とにかく走路上にいたから」といい、阪神・金本監督は「原口のプレーは間違っていない。それに完全にアウトのタイミングで、その場合はコリジョンとしないと聞いてきた」と疑義を呈した。

当コラムでも何度か書いたが、2011年秋の東都大学野球秋季リーグ戦でこんな極端なケースがあった。

本塁を狙った走者が本塁の3、4メートルほど手前のライン上で、既に返球を持っていた捕手に立ったままタッチされアウトになった。走者は完全なアウトのタイミングに本塁突入をあきらめていたのだが、審判は「捕手が走路を開けていない」という理由で「セーフ」とした。

▽野球は得点を争うゲーム

高校野球をはじめ社会人や大学野球でも、けがの防止から接触プレーを禁じている。捕手がちょっとでも三本間のライン上や本塁ベース上にいたら駄目というのは、あまりにも杓子定規的解釈で、得点を競う野球の本質を変えるものでもある。

一過性だと思いたいが、今やそうした流れがプロ野球に押し寄せている。外野手からの好返球から生まれる本塁上でのクロスプレーはプロ野球の大きな見せ場の一つである。多少の接触プレーは避けられないと思っている。

▽送球がそれた場合の判断

一方で、捕手は走者の走路をふさいだりブロックしたりはできないが、捕手が守備をしようとして走路をふさいだか、走路をふさがずには守備ができないと審判が判断した場合はこの限りではないとしている。

阪神は今回の件で日本野球機構(NPB)に抗議の意味を含め意見書を提出。審判側は「原口はラインをまたがずとも返球を捕球できた」とあらためて説明したが、ハーフバウンドを前に出て捕球したら走者をアウトにできないし、後ろに下がるしかなかっただろう。

返球がそれるケース、つまり三塁側にそれた場合は走路をまたぐことになる。それは原則OKだとしているが、そのあたりの審判の対応つまり意見統一が十分になされているとはいえないのが現状である。

▽捕手を危険から守る

このコリジョンルールの原点は、捕手を守ることである。メジャーで捕手が走者に体当たりされ選手生命が危ぶまれるケースがあったことから、14年に試験的に導入し、15年から本格運用となった。

14年は捕手がブロックする度にコリジョンを適用してアウトの判定をセーフに覆すケースが多くみられたが、15年からは相当に緩やかに運用されるようになった。ある程度のブロックは許容範囲としている。

コリジョンルールを、全く危険ではないプレーにまで適用するのは本来の主旨ではないだろう。

日本での捕手の自己防衛策はミットを持った手だけでタッチすることになるが、走者の背中からタッチする「追いタッチ」となり不利は否めない。

逆に走者の体の前にミットだけを差し出せば走者の勢いで手をはねのけられて手首をけがする危険がある。そうならないように捕球後、両手でミットを持ってタッチに行く、つまり体ごとライン上を走る走者に向かって行くことになり「衝突プレー」と見られかねない。

▽試行錯誤は言い訳

プロ野球は導入1年目ということで「試行錯誤」期間としている。だから一部に導入が早すぎたという意見も出てくる。

ただ、答えがない回答みたいなもので、導入した以上は「ちょっとでも走路上にいたらコリジョン適用」が審判にとって正解なのだ。といって、得点という最大の見せ場が味気ないものになってしまっては元も子もない。

どんな基準がいいか。例えば走者の悪質なタックル、ボールを持たない捕手が本塁上に座り込むブロックを禁止するなどがある。もし違反すれば、出場停止などの厳しい処分を科すのも一案だ。

もめることが分かっていたルール導入では事前の調査が欠かせない。メジャーが2年前に導入したのだから、現地で見る機会はあった。導入1年目はこうで、2年目はどうなったという具合に。今更言ってもと思うが、付け焼き刃だけは避けてもらいたいと願うからだ。

▽不公平は避ける

というのは、コリジョン導入と同時に、本塁上のクロスプレーについてコリジョンではないケースでビデオ判定しているからだ。日本では本塁打とコリジョンでのビデオ確認は許されているが、いつの間にか拡大されている。

そう決めたのなら、メジャーのように全てのプレーにおいてビデオ判定を認めるべきである。そうしないと球場によって不公平が生じる。そのための機器設置などにお金はかかるが、ファンサービスからもぜひNPB主導で決断してもらいたい。

田坂貢二[たさか・こうじ]のプロフィル

1945年広島県生まれ。共同通信では東京、大阪を中心に長年プロ野球を取材。編集委員、広島支局長を務める。現在は大学野球を取材。ノンフィクション「球界地図を変えた男 根本陸夫」(共著)等を執筆