日本のエース的存在でもある世界ボクシング機構(WBO)スーパーフライ級チャンピオン井上尚弥(大橋)は8日、同級1位で指名挑戦者のダビド・カルモナ(メキシコ)を明白な判定で下し、2度目の防衛に成功した。

しかし、リング上で井上は「皆さんの期待を裏切り、申し訳ありませんでした」と異例ともいえる反省を口にした。

誰もが豪快なKOを期待し、ここまで鮮やかに立証してきた。そういう意味ではハイレベルの試合内容が求められ、井上もそれを励みにしている。間違いなく超一流王者への階段を上がっている、と表現しても決してオーバーではないだろう。

世界戦では4連続KO勝ちを続け、今回も誰もがKO防衛を信じていた。相手は1位の実力者だが、井上は絶好のコンディションに仕上げた。

開始のゴングから井上のスピードが支配する。左ジャブに続くワンツーが決まり、早くもカルモナはグラリ。しかし、続く2回、井上は右拳に痛みを感じたという。さらに中盤に入ると左手にも痛みが走った。これでは無理はできない。井上は確実にポイントを奪う作戦に切り替えた。

その中、最終の12回に王者のプライドを見た。「何が何でもKOで勝ちたい」。拳のハンディがありながらラッシュを仕掛け、ロープ際で初のダウンを奪った。

立ち上がる挑戦者をなりふり構わず倒しにいったが、惜しくも終了のゴング。井上には悔しそうな表情が浮かんだ。

このKOをあきらめない姿勢が井上の魅力だろう。スマートないつものスタイルではなく、そこにボクサーの本性を見る思いがした。

課題も浮き彫りになった。慢性化してきた拳の故障をどうクリアしていくのか。満足にパンチを出すことができないと「宝の持ち腐れ」になる。

スピード、テクニック、パワーに秀でている井上だけに、唯一最大の弱点と言えるかも知れない。

その昔、試合のたびに骨折を繰り返したフライ級の伝説、海老原博幸の姿がオーバーラップする。ある意味、強打者の宿命だろう。

米国の専門誌「リング」が選ぶ4月のパウンド・フォー・パウンド(全階級を通じての最強)ランキングで井上は初めて9位にランクされた。その有り余る才能は海の向こうでも高い評価を受けている。

拳の故障と闘いながらどう自分を高めていくのか。熱きリングは注目の的である。(津江章二)