巨人の笠原将生元投手が4月29日に賭博開帳図利のほう助罪で逮捕され、野球賭博問題がとうとう事件化した。

笠原容疑者は、友人で胴元役として逮捕された斉藤容疑者に元巨人の松本竜也、高木京介両投手を紹介するなど、野球賭博の中心的存在として逮捕された。その2元投手も書類送検された。

捜査権を持たない日本野球機構(NPB)が、苦肉の策として4月6日から同25日までを野球賭博の「自主申告期間」としたが、新たに申し出る選手や情報提供はなかった。打つ手なしの矢先に警視庁が強制捜査に乗り出したことになる。

プロ野球関係者は捜査への協力を表明しているのだが、笠原容疑者の逮捕で野球賭博の全容解明につながるかどうかが注目される。

▽危機管理意識のなさ

今回の騒動を見ていて、あらためて巨人の危機管理意識のなさを痛感させられる。というのは、巨人が同29日に公表した調査結果によると、笠原容疑者がバカラ賭博をしたとして球団から処分(厳重注意)を受けた後にチームメートをカジノに誘っていた事実があった。

2014年4月に遠征先の名古屋市内で違法カジノ店で賭博をしている情報が球団に寄せられ、問いただしたところ、本人が「二度としない」と反省したことで罰金と厳重注意処分にした。

ところが、このころから笠原容疑者は野球賭博に手を染めたばかりか、複数の同僚選手をカジノに誘ったという。

笠原容疑者の自己責任は厳しく問われるが、一方で謝罪を真に受けた球団がロッカールームなどで頻繁に行われていた賭けトランプ、賭け麻雀などの情報を把握していなかったのかと疑いたくなる。

相手は将来性のあるプロ選手で、いちいち口うるさく言えなかったかもしれないが、ベテラン選手ならいざ知らず、こうした若手選手の「管理」では厳しい球団だったはずだ。たがが相当に緩んでいたとしか思えない。

巨人に限らず、こうした体質の球界が「うみを出し切る」と口でいっても、多くのファンが得心できない理由がこのあたりにありそうだ。

▽相次ぐ不祥事

清原和博元選手の覚せい剤事件、バドミントン選手の裏カジノ賭博、スノーボード強化選手の大麻使用などスポーツ界で不祥事が相次いでいる。

トップ選手になり人気が出てくると周りがちやほやし出す。うるさく言う指導者は選手が敬遠するようになる。

また小さい頃から技術の向上や勝利だけを目指し、厳しい指導法で選手に「自分で考える」ことを放棄させる。気が付けば、自分の意見を持たない、競技以外のことは何も知らない選手が出来上がる。そんな選手が大金を手にするわけだ。

▽選手の教育

高校や大学の看板選手になれば、学校側もついつい甘くなる。そんな中で危機意識を持って選手指導に腐心している。

ある大学野球の監督と話す機会があった。監督に就任して、最初に取り組んだのは合宿所でゴロゴロしていた選手を授業に出させることだった。

「合宿所にいて練習以外に何もすることがないのは最悪。上下関係もあり下級生は大変。この4年間ほどでだいぶ変わった。その代わり、全体練習ができるのは1日だけという週もある。でも選手の意識は徐々に変わってきて、野球にもいい影響を与えている。

教授や他の学生との交流で緊張感が生まれ、社会の出来事も知ることができる。まあ、大学生が授業に出るのは当たり前の話ですが」と話し「せめてNCAA(全米大学体育協会)のように選手の授業日数は厳しくしたほうがいい」と持論を口にした。

▽ファンタジースポーツ

スポーツ大国の米国ではネバダ州など4州以外ではスポーツを対象にした賭けは禁止されている。

一方でインターネットのサイト上での「ファンタジースポーツ」が大流行していて、大手の運営会社を中心に数十億円以上が動いている。

わずかな賭け金で億が付く高額配当がもらえる。スポーツビジネスが全盛ともいわれる米国でも、その成長要因の一つと見られているのである。

自分の好きな選手を集めて「仮想チーム」をつくり、メジャーやアメリカンフットボールのNFLの実際の試合に沿って勝ち負けなどを競うというものだ。

どんな地方にいても参加できるし若い人たちがのめり込みやすい。日本の野球賭博も40年ほど前までは球場のスタンドで直接金のやりとりをしていたが、今では携帯電話などで手軽になっている。

▽幅広い思考で対策を

4月のはじめに馳文科相が勉強会を設け、ビジネスとしての大学スポーツを発展させる構想を明らかにした。

また、自民党のスポーツ立国調査会も大学スポーツをビジネス化して収益を上げているNCAAをモデルにした「日本版NCAA」にしたいそうだ。

ただ、米国の大学のようにアメリカンフットボールやバスケットボールといった絶大な人気スポーツはない。

そのNCAAは選手がのめり込むインターネットによるスポーツギャンブル対策として各大学が専門部署をつくって選手の教育に乗り出していると聞く。

表面だけを見るのではなく、そうした背景と具体的対策を持った構想でないと意味がないと思う。

不祥事が起こると、「選手の教育」が問題になる。多様化する社会の中では幅広い思考で具体的な対策を講じないといけない。決して個人の責任だけで済ませてはならない。

田坂貢二[たさか・こうじ]のプロフィル

1945年広島県生まれ。共同通信では東京、大阪を中心に長年プロ野球を取材。編集委員、広島支局長を務める。現在は大学野球を取材。ノンフィクション「球界地図を変えた男 根本陸夫」(共著)等を執筆