待ちに待った瞬間が訪れた。スーパーラグビー(SR)に今季参入したサンウルブズが4月23日、東京・秩父宮ラグビー場でジャガーズ(アルゼンチン)に36―28で逆転勝ちし、初勝利を収めた。SRは攻撃的なラグビースタイルが特徴で、世界の潮流をつくり出すと言われる最高峰の大会。シーズン前は、日本代表選手が中心となるチームも編成が遅れては勝つのも難しいだろうと思っていた。第2戦での1点差の惜敗。その後も接戦を演じたので、1勝目は時間の問題かと期待を抱きもしたが、やはり道は険しかった。

象徴的だったのは4月15日、南アフリカのブルームフォンテーンでのチーターズ戦だった。100点取られればミスマッチと言われる世界で17―92という記録的な大敗を喫した。場所は、1995年のワールドカップ(W杯)で日本代表がニュージーランド代表のオールブラックスに17―145で敗れた因縁の地。再びの悪夢に、大きな衝撃を受けた。驚きを隠せなかったのは私だけではない。地元記者でさえ試合が終わると「予期せぬことが起こった」と大声を上げた。

今や南アフリカのファンで日本ラグビーのことを知らない人はいない。昨年のW杯1次リーグ初戦。20年以上も勝てなかった日本が2度優勝の「巨人」南アフリカを倒した。その失望は今も色濃く残り、「あれでスプリングボクス(南アフリカ代表の愛称)は目が覚めた」と前向きに捉えるファンもいれば、あるファンは「もうその話はやめよう。確かに日本は強くなった。でもまだまだだ」と悔しそうに苦笑いする。

サンウルブズは目の肥えた地元記者にも高く評価されていた。ブルームフォンテーンを拠点とする地元紙でラグビーを22年担当するコーク記者は「国際テストマッチを経験した選手が比較的多い。それが1年目でも健闘している理由だろう」と指摘していた。WTB山田章仁、FWながらマルチな才能を発揮する堀江翔太は現地でも名前を知られた存在だった。

チーターズのスミス監督は「激しい戦いが毎週のように続く。長い遠征もある。シーズンが深まってどれだけ戦えるか。それこそがSRの厳しさなんだ」とサンウルブズが大敗した理由を指摘した。何か月も準備を重ねて数試合に懸けるW杯と、リーグ戦が2月から7月まで続くSRとは戦い方が違うのだ。

サンウルブズのSR加入は、日本にとって2019年W杯に向けた代表強化という大きな狙いがある。SRのレベルズ(オーストラリア)で2シーズンプレーした経験を持つ堀江主将は「いいことも悪いことも、19年W杯に向けていい経験になっている。(勝利という)先が見えない中でも頑張り続ける姿を見てほしい」。世界最高レベルの選手と体をぶつけ合う経験は何ものにも代え難い経験だ。

苦難を乗り越えてつかんだホームでの勝利は格別だっただろう。普段はひょうひょうとしている堀江は感極まり、陽気なハメット・ヘッドコーチは「思いがけない涙が出た」と話した。7月には再び南アフリカ遠征が待っている。さらに成長した姿を示し、昨年のW杯のようにラグビー大国の人々の記憶を再び塗り替えて欲しい。

★★★本欄は1週休載し5月11日付から再開します★★★

渡辺 匡(わたなべ・ただし)2002年共同通信入社。和歌山支局、大阪社会部などを経て11年から運動部。ラグビー、テニス、スケートなどを担当。東京都出身。