2016年の「ゴルフの祭典」マスターズ・トーナメントで日本男子初のメジャー制覇を目指した松山英樹は最終日まで優勝争いを演じたが、7位に終わった。それでも昨年の5位に続く1桁順位、2年続けて1桁順位だったのは日本選手で初めて。日本から唯一出場して奮闘した松山に、熱い声援を送ったひとりに「同学年のライバル」石川遼がいた。米ツアーで既に初勝利を挙げるなど躍進著しい松山に、すっかりリードを許している。2月から腰を痛めて米ツアーから戦線離脱し、悶々としているはずだけにその胸中には複雑なものがあったと思う。

自身の公式サイトで「マスターズ最終日、ワクワクというよりゾクゾクする。英樹頑張れ!」とエールを送った。「20歳でマスターズ優勝」という夢を描いていた石川にとって、米ツアーでともにプレーする松山がオーガスタの大舞台でスピース、マキロイらとしのぎを削る姿はまぶしく映った一方、悔しさもあったはずだ。

石川は米ツアーの合間に出場した昨年の日本ツアー7戦で2勝。日本勢で唯一の複数勝利をマークするなど、国内では実力の高さを示した。だが、米ツアーでは腰痛で休むまでの6戦で最高が35位で予選落ちが3度と今季も苦しい戦いを強いられている。さまざまな工夫もしている。「重いクラブを同じヘッドスピードで振れれば、それだけ飛距離は出ると思う」と、昨年秋からドライバーはクラブのシャフトを重くして距離の長い米ツアーのコース攻略を図っていた。だが体への負担が大きくなって今回の故障の一因となった。歯車のかみ合わない状況が続いている。

そんな時期に私生活面で大きな変化があった。3月初旬に「かねてからお付き合いをしていた一般女性の方」との結婚を発表した。また4月14日からの日本ツアー国内初戦、東建ホームメイト・カップなどでTVのゲスト解説に挑戦することに決まった。復帰に向けてはやる気持ちを抑えながら、リハビリとトレーニングに追われる日々。環境の変化や視野を広げる新たな取り組みはプラスになる可能性もある。他競技でも故障でプレーができない時間を有効に使い、大きな飛躍を遂げた選手を多く見てきた。無我夢中で試合に出続け、練習で誰よりもボールを打ち込んできた24歳。競技一筋だった人生の歩みを緩めてみるというのも、いいかもしれない。

米ツアーへの復帰は早くでも5月中旬以降。来季のシード権獲得には厳しい立場となっているのは間違いない。入れ替え戦や下部ツアーの可能性も次第に大きくなってきている。米ツアーで日本男子最多の通算3勝の丸山茂樹氏は、後輩の苦境を見かねて「日本(ツアー)で態勢を立て直すのもいい。27、28歳になってからまた米ツアーに挑戦してもよいのでは」と自らの経験をもとに助言を送っている。ただ石川が目指すものはあくまで米ツアーでの優勝だ。「ただ腰を治すだけじゃだめだ。前よりも自分の体のことを知り、思った通りに体を動かし、クラブを操れるようにならなくては…」という。違った時間を経て、石川が新たなプレーを披露するのか、楽しみでならない。

杉山 勝則(すぎやま・かつのり)1984年生まれ。山口県周南市出身。2008年共同通信社入社。本社運動部、大阪運動部を経て、広島支局で主に広島カープを取材、12年末から本社運動部でゴルフ、ラグビーなどを担当。