11年目を迎えたプロ野球セ、パ交流戦もあとわずか。今年もパが強く、6月14日の6試合は全てパ球団が勝つなどパが6年連続10度目の勝ち越しを決めた。

勝敗だけではない。日本ハムの中田、ソフトバンクの柳田らの迫力あるバッティングに驚いたセのファンも多かったのではないだろうか。久々に「人気のセ、実力のパ」という言葉が聞かれた。

2004年の球界再編騒動から生まれた交流戦は、大いなるファンサービスだと思っているが、これではますますセ側が“逃げ腰"になるではないかと心配する。

過去の交流戦ではその後のペナントレースを左右する結果が生まれることが多かった。今年は横浜DeNAが10連敗し3勝14敗1分けで、一時は11あった貯金が借金1と散々な結果になった。

昨年の交流戦優勝の巨人も7勝11敗。セの首位に立っているが、今後に悪影響を及ぼしそうな展開である。その交流戦の最中に、開幕から不振のオリックス・森脇監督が休養した。

▽補強選手が次々故障

森脇監督は昨シーズン、ソフトバンクと最後までリーグ優勝を争い、1勝差で2位。12球団トップの177犠打とリーグ2位の126盗塁と機動力と守りの野球でチームを前年の5位から浮上させた手腕を買われ、今年から新たに2年契約を結んだばかりだった。

ところが今季は昨年16勝のエース金子が右肘手術で出遅れ、昨年40セーブの平野圭らの救援陣の調子が上がらない。

交流戦の最後で阪神に3連勝するなど8勝10敗と明るい兆しが見えた。福良監督代行になり6勝6敗。ただ、通算は24勝40敗1分けと、3割台の勝率で首位から14ゲーム以上離され、Aクラスは遠い。

森脇監督は6月2日の休養発表の会見で「素晴らしい補強で十分な戦力をいただきながら、ただただ私の力不足だと思う」と語った。

監督が言う補強とは元西武でメジャー帰りの中島、日本ハムから小谷野をFA獲得、元中日のホームラン打者ブランコ、元広島投手のバリントンらを指す。

この30億円ともいわれた大型補強選手が次々と故障する不運の一方、「スモールベースボール」を目指す森脇監督の野球に狂いが生じたのは間違いない。

▽球団の方針を伝えたか

ダイエー(現ソフトバンク)やロッテでチームづくりに関わり優勝実績もある瀬戸山隆三球団本部長がそばにいながら、なんでそんな補強をしたのか。昨年の好成績で優勝への機運が盛り上がり、宮内義彦オーナーの強い希望でチーム事情を無視したような大型補強に突き進んだのではないかと想像している。

それでも、球団の方針を監督にしっかり伝えたはずだ。今回の監督の休養を見ていると、オーナーと現場の橋渡し役としてチームづくりをするフロントの役割の重要性を痛感する。

▽休養という名の更迭

オリックスは阪神大震災直後の1995、96年の連覇以来、優勝から遠ざかったまま。イチローが去り、人気面でも同じ関西の阪神には大きく水をあけられている。

米国でリース業を学んだ宮内オーナーは米国通でもあり、プロ野球のステータスの高さは熟知しているだけに、また優勝したい思いに駆られていると想像できる。

そうした焦りからか、05年の近鉄との合併以来、11シーズンで今回の福良監督代行で実に7人目の指揮官となる。

成績が悪ければ、監督が交代させられるのは世の常。オリックスは12年途中に岡田彰布監督から森脇監督代行に代え、昨シーズンの西武は伊原春樹監督から田辺監督代行へ途中交代させ、そのまま新監督に据えた。ただ、監督の休養は日本ならではのやり方だ。

シーズン途中で監督の首を切るのは忍びないのか、昔から休養という名の更迭を繰り返してきた。

休養した監督が復帰した例もある。一番有名なのが1962年の南海・鶴岡一人監督(故人)で「指揮官が悪いと部隊は全滅する」と言い残して休養したが、復帰して2位になった。

▽名選手は名監督にあらず

森脇監督が復帰することはまずないだろう。森脇監督は近鉄、広島、南海などでプレーしたが、選手としての実績はあまりない。一方、指導者としてはソフトバンクで王貞治監督の右腕として信頼を得た。王監督がWBC監督や病気療養中は監督代行を務めた。

日本は名選手が自動的に監督に就任することが多い。それだけに、私は森脇監督に期待していた。

イチローのいるメジャーのマーリンズなどは、シーズン途中でレドモンド監督を更迭しGMで選手経験のないジェニングス監督に代えている。

メジャーでの監督を選ぶ基準は名前ではなく、あくまで指導者としての実力なのである。名選手が必ずしも名監督になるとは限らない。

田坂貢二[たさか・こうじ]のプロフィル

1945年広島県生まれ。共同通信では東京、大阪を中心に長年プロ野球を取材。編集委員、広島支局長を務める。現在は大学野球を取材。ノンフィクション「球界地図を変えた男 根本陸夫」(共著)等を執筆