若手が次々と台頭してパ・リーグの首位争いを繰り広げている日本ハムに、開幕してからまた一人頼もしい若武者が出てきた。昨秋のドラフト会議で4球団が競合したルーキーの有原航平(早大出)だ。右肘に不安を抱えていたためにキャンプから2軍で慎重に調整してきたが、5月中旬に1軍に昇格してからはすっかり先発ローテーションに定着した。

プロ初マウンドは5月15日のオリックス戦。6回2失点で降板した直後に打線が3点を奪って逆転し、初勝利を手にした。試合後には「投げられない時期もあった。支えてもらって、感謝の気持ちを持ってこれからも投げていく」と喜びをかみしめた。中8日の24日のソフトバンク戦は5回6失点と強力打線に圧倒された。「甘い球を見逃してくれない。自分のリズムでなかなか投球ができなかった」とのレベルの高さを痛感する結果となった。

1軍のマウンドに2試合立っただけで、有原には感じたことがあった。腕が全力で振れていないということだ。投げ終わった後に映像でも確認した。ソフトバンクに打ち込まれた時にも「しっかりと腕を振った変化球の時は三振を取れた。どんな時でもしっかり腕を振りたいと思った」と課題を再認識している。ならば、勝てる投手になるためにはもっと腕を振るしかない。

交流戦の皮切りとなったヤクルト戦で、早大時代に慣れ親しんだ神宮球場の土を久しぶりに踏んだ。登板機会はなかったがブルペンではノーワインドアップで投球練習をこなした。これまでは走者がいない時でもセットポジションを崩さなかったが、31日の中日戦から大学時代のようにノーワインドアップに戻すと、自己最速にあと2キロと迫るプロ入り後最速の154キロをマーク。ちぎれんばかりに腕を振って2勝目を挙げた右腕に、栗山監督は「きょうの勝ちが(プロ野球人生の)スタート。変化球をうまく使える投手でありながら、まっすぐが強いからあれだけのスケール。ダルビッシュみたいなタイプなんだろうね」とわずかな期間での成長ぶりを褒めた。

今春のキャンプでは有原がブルペン入りするとなれば、栗山監督は1軍の練習をコーチ陣に任せ、車で約40分離れた2軍のキャンプ地まで駆けつけた。それも一度だけではなく毎回だった。5月の初登板当日は早大のスクールカラーに合わせたえんじ色のパンツをはき「シーズン中に新しくすることはない」という練習着を新調する用意周到ぶりだった。また、グラウンド上では別の選手による験かつぎもあった。有原の登板前日に2度マウンドに立った大谷だ。14日の西武戦、30日の中日戦で勝利投手となると、ヒーローインタビューでは「あしたは有原さんが勝ってくれると思う」と声を張り、2学年上の先輩にエールを送った。プロの世界に飛び込んだばかりの新人にとって、やりやすい恵まれた環境の中で野球ができているとほほえましく映る。

ここまでは周囲に勝たせてもらった勝利という印象もある。勝ち運を持っているのも投手としては重要な要素だが、まだ持っている能力の全てを出し切っていない気もする。潜在能力が存分に発揮されたときに、どんな投球を見せてくれるのかが楽しみでならない。

松下裕一(まつした・ゆういち)2004年共同通信入社。05年からプロ野球を取材し、オリックス、阪神、ヤクルト、西武を担当。13年からは日本ハム担当。東京都出身。