まだ日程を3分の1近く残している時点で気が早いのかもしれないが、流れは浦和に傾いているのかなと思う。

J1第1ステージ第12節。首位に立つ浦和と2位FC東京の一戦は、2ステージ制の短期リーグの天王山だった。勝ち点差1で追うFC東京が勝てば暫定ではあるものの首位が交代する。逆に浦和が勝てば、差は広がる。しかも、浦和はACL出場で消化試合が1試合少ない。ここでの勝利はタイトルを大きく近づけることを意味するものだった。

FC東京戦に臨んだ浦和がとった「傾向と対策」。それがいたって単純明快なことはすぐに分かった。試合前に関係者に配られるメンバー表にその答えがあったからだ。

先発メンバーと控え選手の名前が記されているその表には、各選手の試合出場数と得点数が書かれている。FC東京の欄を見ると、かなり偏った傾向があることに気づく。得点者が武藤嘉紀、森重真人、太田宏介の3人しかいないのだ。今シーズンのFC東京で得点を挙げているのは、故障で欠場している石川直宏を加えた4人だけ。控えも含めて、9人の得点者がいる浦和とは大違いだ。

11節終了時でFC東京の総得点は14だが、その半分(7点)がセットプレー絡み。今季得点者のうち、森重と太田の得点はセットプレーからだ。そうなると危険なのは武藤だけということになる。浦和の守備陣は、このターゲットを徹底的につぶすことに専念すればいいだけだった。

基本的にカウンター狙いのFC東京に対し、当然のことながら主導権を握ったのは浦和。中でも、特筆すべき活躍を見せたのが左サイドの宇賀神友弥だった。ライン際を激しい上下動を繰り返す抜群のスタミナ。さらに体をぶつけることに何の躊躇もない果敢さ。90分間を戦える男が、この日は攻撃面でも最高の演出者となった。

開始5分、興梠慎三からのパスを左サイドの高い位置で受けた宇賀神の視線の先にいたのが李忠成。今シーズン、まだゴールを挙げられていなかったストライカーだ。「チュン君(李)に、あそこに入れろ」と練習でも要求されている、GKの鼻先をかすめるクロス。GKが飛び出せないタイミングで入れた宇賀神のボール。それを李の左足がわずかにコースを変え、待望の先制点が生まれた。

ともに局面での激しいつぶし合いを見せる試合。特にFC東京の武藤と対峙する浦和DF槙野智章、森脇良太のやりとりが楽しい。そのような中、FC東京が前半、唯一のシュートを放つ。25分、太田の右CK。阿部勇樹のマークをうまく振りほどいた武藤がフリーでヘッド。体の向きがわずかに外にずれ、シュートは外れたが、決まっていてもおかしくないビッグチャンスだった。

流れの中では危ない場面はない。理想的な試合運びを見せる浦和が、試合の行方をほぼ決定づけたのは前半42分。またも宇賀神の冷静な判断が光った。

左サイドで宇賀神がボールを受けると、興梠、李、武藤祐樹の浦和のアタッカー陣がFC東京のゴール前になだれ込む。しかし、宇賀神が見ていたのは右サイドの大外からフリーで駆け上がる関根貴大。その関根へのピンポイントクロスから、浦和の貴重な2点目となる美しいボレーシュートは生まれた。

後半に浦和が2点、FC東京が1点を奪い最終的に4―1で浦和が勝利を収めた試合。振り返れば2点目が決まった時点で勝敗は決したといっていいだろう。それを考えれば、この首位決戦で2アシストを記録した宇賀神の働きはグレートだった。本人も「みんな驚いたんじゃないですか」とおどけられるのは、充実した内容の試合を戦い抜いたからだろう。

浦和といえばここ数年は、優勝に手が届きそうな順位にいながらも終盤の信じられない失速で何ひとつタイトルを手にすることができていない。ただ今回は短期決戦。これまでとは展開が変わりそうだ。

追い風も吹いている。この日、前節まで2位のG大阪、4位の広島が、それぞれ引き分けた。上位5チームのなかで勝ったのは浦和だけだ。2位ガンバとの勝ち点差4は、確かに簡単にひっくり返るポイント差だ。しかし、いまの浦和にとって心強いのはチームの無敗記録を更新しているということ。短期決戦に欠かせない勢いというものが感じられる。

一方、ここまで上位を走ってきたFC東京だったが、あまりにも攻撃のパターンが少な過ぎる。武藤を封じられれば打つ手がないというのでは、タイトルを狙うには無理があるだろう。

それにしても17試合でリーグの優勝を争うのは、あまりにも味気ない。結果の見え始めた第1ステージのなかで、また盛り上がる場面が訪れるのか心配になる。

岩崎龍一[いわさき・りゅういち]のプロフィル

サッカージャーナリスト。1960年青森県八戸市生まれ。明治大学卒。サッカー専門誌記者を経てフリーに。新聞、雑誌等で原稿を執筆。ワールドカップの現地取材はブラジル大会で6大会連続となる。