姉妹であり、同志でもある2人の思いが実った。サッカーの女子ワールドカップ(W杯)カナダ大会(6月6日開幕)で2連覇に挑む日本代表「なでしこジャパン」に、大儀見優季(旧姓永里・ウォルフスブルク)と永里亜紗乃(ポツダム)がそろって選出された。ドイツでのシーズンを終え、12日に同じ便で羽田空港に帰国。ダブル選出の感想を問われた姉の大儀見が「彼女自身の夢でもあったし、自分自身の夢でもあった」と言えば、妹の永里も「姉と同じチームになれてすごくうれしい」と朗らかに笑った。仲むつまじい姿に、こちらまで幸せな気分になった。

長男はかつてJリーグで活躍し、現在はタイのクラブに所属する永里源気。その兄を追い、姉妹もサッカーにのめり込んだ。2人の性格は対照的で、姉は堅実な理論派、妹は天才肌の感覚派。中学時代までサッカーと両立してピアノを習っていたが、何度も練習してゆっくり上達していく姉に対し、妹は譜面を読めばすぐにそれなりの出来栄えで弾けたという。

サッカーに関しては、順調に階段を上っていったのは姉の方だった。10代からフル代表で活躍し、初優勝した11年の女子W杯や銀メダルに輝いたロンドン五輪にも出場した。ドイツやイングランドのリーグでもまれ、海外勢にも当たり負けしないたくましさと頭脳的なプレーを持ち合わせる。今では絶対的なエースに成長し「この4年間で確かなものを積み重ねてきた」と自信を見せる。

一方の妹は「3きょうだいで一番」と言われたサッカーセンスの持ち主だった。しかし代表には定着できず、13年にドイツに挑戦。当時サッカーと仕事を両立させていた亜紗乃は勤務先に辞表を出し、退路を断って異国に渡った。姉のつてで練習参加したポツダムに何とか入団したが、当初クラブでは下部チーム。そこからトップチームの主力にのし上がり「4年前から何をしなきゃいけないか考えて取り組んできた。選ばれてうれしい」とうなずいた。

頻繁に連絡をかわす仲の良さで、現地ではお互いの存在が励みになったようだ。姉はことし1月に強豪のウォルフスブルクに加わり、久々にベンチを温める日々に苦しんだ。「今季折れずに進んでこられたのは妹のおかげ。たまっていることを唯一吐き出せる相手。その存在が身近にいた」と感謝。妹は姉のプレーからヒントを得たそうで「試合を見た後に自分が感じたことを言ってみて、ピッチでどう感じていたかを聞いた。すごく勉強になった」と明かした。

2人は小学校高学年時代に攻撃的な選手としてコンビを組んでいた。父の正彦さんが忘れられないのは、地元の厚木市で開かれた大会で決めた「キックオフゴール」。開始の笛とともに妹がちょこんと出し、姉が「ドカンと蹴った」。豪快なロングシュートでネットを揺らし、会場をどよめかせたそうだ。

女子W杯で姉はFW、妹はサイドMFとして起用される見込み。最高峰の舞台ではさすがに「キックオフゴール」は難しいだろうが、世界をあっと言わせる連係プレーが見られるかもしれない。現地に応援に行く予定の正彦さんは「親としてはピッチに同時に立ち、協力し合うところを見てみたい。全部出し切ってほしい」と期待した。

石井大輔(いしい・だいすけ)1983年生まれ。東京都出身。06年共同通信社入社。名古屋支社、仙台支社(プロ野球楽天担当)を経て11年12月から本社でサッカーなどを担当。現在はサッカー女子日本代表を中心に取材。慶大時代はボート部に所属した。