先日、プロ野球OBの方がテレビ番組で発した「J2は2軍」という言葉が議論を巻き起こしたが、いやぁ、どうしてどうして。もし、この元名選手がもう少し早くこのような試合に出会っていたなら、決して前述のような言葉を発することはなかっただろう。

4月26日に、千葉が磐田を本拠・フクアリ(フクダ電子アリーナ)に迎えたJ2第9節。3位と首位の上位対決として注目された序盤戦の天王山は、内容的にも「J2舐めんなよ!」と声高らかに発信できる、質の高い好ゲームだった。

この両チームに関しては、選手の顔ぶれを見てもJ1勢に比べて遜色がない。いや、経済力の弱いJ1のチームより、はるかにいい選手がそろっている。

それを証拠に、この試合には4人のW杯経験者が出場した。千葉に14年ぶりに復帰した2002年日韓大会のヒーロー鈴木隆行に加え、磐田には駒野友一、伊野波雅彦、松井大輔の3人。そのうち伊野波を除く3人は、日本代表のレギュラーとしてW杯本大会を戦った選手だ。それだけでもJ2の舞台では異例の豪華さだった。

両チームとも昨年はシーズン途中で監督が交代。千葉は関塚隆監督、磐田は名波浩監督が指揮を執るようになった。そのなかでJ1昇格プレーオフまではこぎ着けたものの、準決勝では磐田が、決勝では千葉が、シーズンでは6位だった山形に敗れた。

昨年、J2に降格した磐田がいい例なのだが、J1でも十分に戦える豊富な選手層を備えたチームがJ2を戦う場合、選手の質に頼ったきれいなサッカーをしようとし過ぎるきらいがある。そして、シーズンも半ばを過ぎると「いい内容なのに結果がついてこない」という言葉が聞こえてくるのだ。

J2は思われているほど簡単なリーグではない。なぜなら、J2はJ1以上に「戦う」チームが多いからだ。多少の技術の差は、体を張ることで埋められる。それを理解せずに、「きれいなサッカーで」臨むJ1からの降格チームは痛い目にあうことが多い。

千葉と磐田の一戦が好勝負となったのは、ともに戦うチームに変貌していたからだった。この両チームには、ボールを持たせればうまい選手が数多くいる。当然、質の高いサッカーを目指しているのだが、前提としてあるのは球際での厳しい攻防だ。目に見えて伝わる気迫は、昨年の昇格プレーオフ時から一番変わった点ではないだろうか。

密度の濃い試合というのは、時間の経過が速く感じる。そのなかで先制したのは磐田だった。前半21分、松浦拓弥からの縦パスを受けたジェイが右足で豪快にたたき込んだ。イングランド代表1キャップのジェイは、本来は左足オンリーの選手だそうだが、「ファーストタッチでターンしてトップコーナーにうまく決められた」と自賛する通りの美しい得点だった。

後半に入ると、1点を追う千葉が素晴らしい攻勢を見せた。後半24分、30分と立て続けにペチュニクが決定機を迎える。そのピンチをことごとく防いだのが磐田のGKカミンスキー。本人は「あれが私の仕事ですから」とさらりと言ってのけたが、この試合の勝利はまさしく優れたGKとともにあった。

カミンスキーを中心に、集中力を切らすことのない磐田の守り。それは後半ロスタイムの松井の2点目につながった。右サイドの中村祐輝のパスを流れるような動作で決めた胸トラップからの左足ダイレクトボレーは、松井ならではの高い技術が光ったゴールだった。

結果は、磐田の2―0の勝利。スコアだけを見れば磐田の完勝に思えるかもしれない。しかし、内容的には千葉が主導権を握っていた試合だった。その意味で、この試合はサッカーというものは必ずしも優勢なチームが勝利を収めるゲームではないという証明のようなものだった。

千葉にしてみれば、首位・磐田を相手に主導権を握りながらも勝ち点を5差に引き離された痛い一戦だった。ただ、関塚監督は「選手たちは躍動感のあるプレーをみせてくれた」と悔しさのなかにも満足感をのぞかせていた。それぐらい充実した内容だった。

常にいいメンバーがそろっているといわれながら、J2で6シーズン目を迎えた千葉。そして、昨年は楽勝でJ1復帰を果たすだろうと見なされながらも2季目のJ2を戦うことになった磐田。本来はJ1でプレーしていてもおかしくないチームが、ちょっとスタイルを変えてよりたくましくなってきた。

これらを筆頭に、さまざまな個性を持つ22チームで争われるJ2。ここで繰り広げられる、なかなかにして面白い戦いは、決して2軍戦などではない。

岩崎龍一[いわさき・りゅういち]のプロフィル

サッカージャーナリスト。1960年青森県八戸市生まれ。明治大学卒。サッカー専門誌記者を経てフリーに。新聞、雑誌等で原稿を執筆。ワールドカップの現地取材はブラジル大会で6大会連続となる。