41歳と現役野手最年長のマーリンズ・イチローが圧倒的な存在感を見せつけている。もちろん全盛時のようなわけにはいかないが、この年で守れて走れる選手は、まあいない。

「無事これ名馬」という作家・菊池寛の言葉が浮かんでくるが、スポーツ選手の大敵はけがであるのだから、イチローがけが防止の面からもスリムな体型を維持し続けているのは奇跡的にすら思える。本人には「それがプロだ」と軽くいなされそうだが。

ヤンキースの田中が右腕故障で再び故障者リスト入りするなど、このところ日米のプロ野球でけが人が目立っている。

ファンからしたら「戦う前に敗れる」状態は最悪で憤まんやるかたない思いになるだろう。

選手もけがは選手生命の危機に直結するだけに細心の注意をしているはずで、球団もそのための資金投入は惜しんでいない。それでもけがは起きる。

▽青学大の箱根駅伝勝因

今年正月の箱根駅伝で優勝したのは青山学院大だった。ここ数年、強くなっていると思っていたが、大方の予想を覆す独走での初優勝は見事だった。

監督になって10年。チームを頂点に押し上げた原晋監督の指導法の中で目がいったのは「けがをしない体づくり」だった。

体幹を鍛えるなど科学的な練習方法でけが人を少なくしていった。けがしたことを選手は隠したがるものだが、素直に報告させた。計算した通りの選手で戦えたことが勝因となったのである。

▽阿部、坂本らが戦列離脱

巨人の主力組にけが人が相次いでいる。内海、相川、亀井そして阿部、さらに坂本が戦列を離れた。それでも首位争いをしているのはさすがだが、やり繰りだけでは限界があり主力の復帰がないと苦しくなるのは目に見えている。

急きょ新外国人を補強した。そのフランシスコ内野手が間もなく1軍に合流するが、起爆剤となるかどうか。

得点源のエルドレッドを膝の故障で欠く広島、エース金子のいないオリックスは野手の平野、メジャー帰りの中島までけがで不在となり、それがそのまま今の戦績に直結している。

真中新監督で上位に躍進しているヤクルトが、ここ数年は主に投手にけが人が続出して最下位に低迷。昨年、太ももを故障したバレンティンが復帰したと思ったら、またけが。巨人のように補強するかどうか、球団フロントの出番でもある。

▽無理がたたる

メジャーではレンジャーズのダルビッシュが右肘を手術したが、マリナーズ・岩隈、カブス・和田らも次々と故障で戦列を離れた。

ヤンキースの田中の故障箇所は右手首炎症と右前腕部の張りで、昨年夏に痛めた右肘ではないといっているが、全く別の故障とは考えにくい。長期離脱もあり得る話で心配だ。

田中はキャンプ以来、慎重に調整してきたが、4月18日のレイズ戦で7回を2安打8奪三振で勝利投手となり、中4日で登板したタイガース戦は本来の力強い投球がよみがえったと評価された。

ただ、この試合は気温0・5度の悪コンディションで、これが直接的な影響を与えた可能性はある。

無理がたたる。寒さや予想外の長いイニングでの投球が肘、肩に悪影響を与えることはある。

今年、ソフトバンクに入団した島袋もそうだった。沖縄・興南高で史上6校目の甲子園春夏連覇を達成した。

中大2年の春のリーグ戦の東洋大1回戦で延長15回を投げ抜き、中1日で先発した3回戦は7回まで投げた。ともに勝利投手となったばかりか計32三振を奪うすごい内容だった。

ところが、左腕に変調をきたして戦列離脱。3、4年ではわずか4勝に終わった。特長だった打ちづらい変化球が投げられなくなったが、念願のプロ入りは果たした。

頑張ってほしいと思うが、あの3年前の神宮球場での2試合は忘れられない。

指導者なら誰でもけが防止に頭を悩ます。西武監督時代の広岡達朗氏は激しいラグビーに目を付け、球団にラグビー経験者の臨時コーチを要請したことがあった。

頼まれて、西武球団と日本代表クラスの元選手の話し合いをセットしようとしたが、プロ、アマの壁に臨時コーチは実現しなかった。今なら実現したかもしれないが、いろいろなことを考えるものだと感心した記憶がある。

田坂貢二[たさか・こうじ]のプロフィル

1945年広島県生まれ。共同通信では東京、大阪を中心に長年プロ野球を取材。編集委員、広島支局長を務める。現在は大学野球を取材。ノンフィクション「球界地図を変えた男 根本陸夫」(共著)等を執筆