店先に張り出されたメニューに誘われて、期待して入ったレストラン。しかし、出された食事はあまり美味しくなかった―。期待していた分だけ、失望も大きい。

取材する対戦カードの選択。それは食事と同じように、“メニュー"をあらかじめ確認して選ぶことが多い。とはいえ、がっかりさせられることもしばしばある。14日に行われたJ1第2節のFC東京対横浜Mは、残念ながらそんな試合だった。

メニューには魅力的な内容が揃っていた。FC東京には開幕戦で2得点を挙げ、「2年目のジンクスなど関係ないよ」と友人記者から伝え聞いたFW武藤嘉紀がいる。一方、横浜Mにはブラジルの名門サンパウロから、U―21ブラジル代表のFWアデミウソンが加わった。このアタッカーは、欧州のビッグクラブも目をつけているという。久々にすごいブラジル人選手がJリーグに来たとの噂だ。ただ、8日に来日したばかりで、まだ「食べ頃」ではないかもしれない。それでも、素材が高品質なのは疑いようがない。

試合が始まった。しかし、前半終了時点で取材ノートを見直してみたら、ほとんどメモがない。こんな場合、後半に試合が動くことが多いので、残り45分に期待しよう。そう思って見ていたら、瞬く間にタイムアップ。結果は0―0の引き分けだった。

それにしても、盛り上がりの少ない試合だった。開幕戦で3失点を喫し守備に不安を見せた横浜M。それでもこのチームは、守備ラインを下げてDFラインの裏を取られない戦い方をすれば、めっぽう守備が堅い。

FC東京は、その堅守を崩すことがまったくできなかった。チーム全体で放ったシュートは、武藤が前半29分と後半7分に放った2本のみ。決定機も、DF太田宏介の右CKを武藤がヘディングで捉えたもののクロスバーを直撃した後半7分の場面だけで、ゴールの匂いはほとんど感じられなかった。

一方、守備から入ってカウンターでチャンスをうかがう横浜Mには勝機があった。後半9分、10分と兵藤慎剛が立て続けにビッグチャンスを迎えた。しかし、本人が「決まったと思った」というその2本ともにゴールラインを割ることはなかった。

立ちはだかったのは、FC東京のGK権田修一だ。横浜Mのモンバエルツ監督が「相手のGKにおめでとうといいたい」と語るほどのファインセーブは、退屈だった試合の数少ない見せ場となった。

期待していたもう一人のタレント、アデミウソンも、感覚としてはまだ料理の仕込みの最中。皿に盛り付けるまでには至っていなかった。後半33分には右サイドをドリブル突破したFW斎藤学のラストパスをフリーで受けるビッグチャンスがあったが、右足シュートはミートできなかった。本調子なら楽々とゴールを決められたであろうその場面を振り返って、本人はぷっと吹き出して苦笑。「あれは忘れたいぐらい」と語っていたが、地球の裏側からという長旅の疲れも癒えない新戦力に、初めから多くを求めるのも可哀想だ。

ただ、そのプレーを見ると、新加入の外国人ストライカーにありがちなエゴは感じられず、味方を生かす術も身につけている。話しぶりも21歳にしては落ち着いており、チームに馴染むにはそれほど多くの時間を必要としない気がする。

試合には、直前の13日に来日し日本代表の新指揮官に就任したハリルホジッチ監督も視察に訪れていた。サッカーを知り尽くしたハリルホジッチ監督のレベルになると、一見退屈に見えるこのような試合でも、我々とは目の付けどころがきっと違うはずだ。食事に例えれば、サンドイッチに添えられる飾りとしか思えない、パセリの品質にさえ目が向けられるのだろう…。などと、勝手に思っていたのだが、中継局のプロデューサーの話によれば、そのサッカー観察の達人でさえ、試合中に何度も欠伸をしていたという。原因は時差ボケによるものかもしれないのだが。

そのハリルホジッチ監督は、帰り際に興味深いことを話していた。「もう少しやる気を出して、力強さを出していけば、もっと高いレベルに行くことができる」と。

言葉の持つ意味の真意が、僕にはよく理解できなかった。ただ、もしこの試合が「やる気のない」ように見えたのなら、ハリルホジッチ監督は、日本で初めて摂る食事のレストラン選びを間違えた。そう思われても仕方のない内容だった。できればもう少し、美味しい食事を味わって欲しかった。

岩崎龍一[いわさき・りゅういち]のプロフィル

サッカージャーナリスト。1960年青森県八戸市生まれ。明治大学卒。サッカー専門誌記者を経てフリーに。新聞、雑誌等で原稿を執筆。ワールドカップの現地取材はブラジル大会で6大会連続となる。