日本がアジアのなかで保っている優位性。アジアカップでの日本代表は準々決勝敗退という期待はずれの結果に終わった。しかし、試合内容を見れば、ボールの保持率やシュートに持ち込む回数などは他国に勝っていた。それを考えれば、日本はアジア地域ではまだ、強い部類に入るのだろう。一番の問題は、シュートを決められないという慢性的な“疾患"を抱えていることなのだが…。

ただ、この強さが日本のサッカー界全体のものかというと疑問だ。日本、いや日本代表の強さは、日の丸をつけている選手個人の質で成り立っているものであり、日本サッカー全体のレベルの高さを現しているのではない。日本代表の先発メンバーのほとんどを占める欧州で活躍する選手たち、いわゆる「欧州組」の質の高さ、実力が反映されているだけではないかと考えさせられてしまう。

昨年、Jリーグ、天皇杯、ナビスコカップの国内3冠を成し遂げたG大阪。日本国内の全タイトルを獲得した、最高峰に位置するチームだ。舞台をアジアに移しても、さぞかし強いのだろうと期待していたのだが、蓋を開けると今のところ散々の結果だ。

アジア最強クラブを決めるアジア・チャンピオンズリーグ(ACL)。3年ぶり7度目の出場となったG大阪は、2月24日にホームで開催した1次リーグ第1戦で、広州富力(中国)に0―2の完敗を喫した。それでもまだ、「シーズン初戦だから」と許せた。

ところが、浦和に勝利した28日の富士ゼロックス杯スーパーカップを挟んで、今月3日に敵地で行われた城南(韓国)との第2戦でも見せ場を作り出すことなく、0―2で敗れてしまった。

国内での戦いならば、MF遠藤保仁を中心として巧みなパス回しで攻撃を組み立てていくG大阪。ところが、フィジカルが鍛えられている城南と対すると、パスをつなぎながら主導権を握る得意のゲーム運びがまったくといっていいほどできない。ボール扱いが多少巧みであっても、体を張って潰しにかかってくる相手だと無力にさせられるのだ。

これはG大阪だけでなく、Jリーグ全チームに共通する弱点といえる。なぜなら、Jリーグで行われているサッカーは基本規則こそ国際ルールに準じているが、その判定基準は日本独自のものだからだ。中でも、フィジカル・コンタクトをどこまで正当と認めるかには大きな違いがある。

Jリーグの試合を見ていると、競り合いであっけないほどすぐに倒れる選手が多いことに気づく。接触プレーに対するファウルの基準が他国のリーグよりも甘めだからだ。そして、みっともない行為だと思うのだが、痛そうにのたうち回っていた選手はレフェリーが笛を吹くやいなや、何事もなかったかのように立ち上がってプレーに戻る。このような日本基準の判定を期待して倒れても、国際舞台では当然のごとく無視されてしまうのだ。

厳しい接触でもファウルを取ってもらえない環境でプレーしていれば、体を当てられてもブレない技術が身につく。残念ながら日本のプロ選手たちは、プレッシャーの緩い場面でしか活かせない技術しか持たない選手が多い。ACL1次リーグの2戦を終え、出場4チームのうち、柏を除く、G大阪、浦和、鹿島の3チームがともに連敗を喫したのも、それと関係ないとは言い切れないだろう。

G大阪の試合に話を戻すと、前半8分に城南のFWファン・ウィジョを両手で抱え込んでPKを与えた守備的MF小椋祥平の軽率なプレー。後半22分に同じファン・ウィジョの切り返し一発で尻もちをつかされたDF丹羽大輝の対処は、およそセンターバックとは思えなかった。2失点の場面だけを振り返っても、日本の選手は1対1への対応の能力が低いというのが実感だった。

欧州組は、常に自分よりも体格のいい相手と球際での激しい攻防を繰り広げている。その経験を通じて1対1において勝機を見いだす自分なりの術を身につけている。一方で日本国内はとなると、簡単には変わりそうはない。まず育成年代からサッカーに対する考え方を変えないと難しいだろう。そして、この取り組みには長い年月がかかる。

パスで相手から逃れ、集団で勝つサッカー。日本が近年目指してきたサッカーで、国内3冠に輝いたG大阪。それがアジアでは通用しない。大きな問題だ。変革が必要だろう。

優れた要素を継承することは大前提だ。加えて、サッカーの基本である「目の前の相手を打ち負かす」という戦う姿勢。これを植え付けなければ、日本の保っている優位性は、あっという間に過去のものになってしまう可能性がある。

岩崎龍一[いわさき・りゅういち]のプロフィル

サッカージャーナリスト。1960年青森県八戸市生まれ。明治大学卒。サッカー専門誌記者を経てフリーに。新聞、雑誌等で原稿を執筆。ワールドカップの現地取材はブラジル大会で6大会連続となる。