マクラーレン・ホンダがついに始動した。1988年から92年までの5年間で4度、ワールドチャンピオンを獲得し、日本に空前のF1ブームを巻き起こしたあのマクラーレン・ホンダが今季ついに復活するのだ。このコンビといえば、88年のイメージが強烈に残っている人も多いことだろう。アイルトン・セナ、アラン・プロストというF1史に残る名ドライバーを起用して全16戦15勝と圧倒的な強さを見せた、あの「紅白カラー」のマシンだ。

当時、そして今回の復帰に際してもチームの指揮を執るのが、今年68歳になるマクラーレン代表のロン・デニスだ。

勝つためにはためらうことなく冷徹な判断を下す、勝負に厳しい人間として広く知られているロン・デニス。優勝回数182回、コンストラクターズチャンピオン8回、ドライバーズチャンピオン12回を刻んだ名門を率いる名将に、勝利に必要なことを聞いた。

「当たり前の事だが、勝利のためにはあらゆる要素が必要だ。だがそれに加えて必要なのが人々を刺激するカリスマだろう。例えば、トヨタは9年間F1に挑戦したが勝利はゼロだった。彼らは昼夜ハードワークをいとわず、最高の施設、トップレベルの予算、良いドライバーを起用したにもかかわらずだ。しかし、それがレーシングという世界だ。最後に全員が同じ方向で力を振り絞るために必要なもの、それが周囲の人を奮い立たせるカリスマの存在だと思う。当時のマクラーレン・ホンダであれば、それはアラン・プロストであり、アイルトン・セナであり、そして本田宗一郎さんだ。彼らが勝ちたいと言葉を発すれば、周囲はそれを実現するために一心不乱に取り組む。周囲にそうした刺激を与える存在、カリスマが必要だと思う」

たしかに、フェラーリ創設者のエンツォ・フェラーリや日本では昨年公開された映画「ラッシュ/プライドと友情」の主役でもあったニキ・ラウダ、ベネトンとフェラーリで王者を獲得したミヒャエル・シューマッハー、そして最近では飲料メーカー「レッドブル」の創業者で、F1ではレッドブルとトロロッソの2チームでオーナーを務めるディートリヒ・マテシッツなど、数々の勝利の裏にはカリスマ性の高い人物やドライバーが大きな影響を与えていることがわかる。

果たして、今年復活するマクラーレン・ホンダにとってのカリスマとは誰なのか? 残念ながらそれを聞く前にインタビュー時間は終わった。だが、ロン・デニス自身は自分をカリスマと表現することはなかった。フェルナンド・アロンソとジェンソン・バトンは新たな黄金時代のカリスマとなるのか、そこも注目しながらシーズン開幕を待ちたい。(モータージャーナリスト・田口浩次)