これが本当にトップリーグのチームなのか。思わず、そうつぶやいてしまった。2季目を迎えたバスケットボール男子のナショナルリーグ(NBL)で活動する和歌山トライアンズを、1月に取材したときのことだ。

昨年末から経営不安が報じられていた和歌山は、リーグ戦が中断期間中だった1月7日、運営会社の経営難から活動停止が発表された。その後、紆余曲折を経て、和歌山県バスケットボール協会を中心に新運営会社が設立されることとなり、14日に存続が決定。だが、そこからも苦難の連続だった。

ホームの会場で、クラブの事務所も入っていた「ノーリツアリーナ和歌山」は、旧運営会社が賃貸借契約を結んでいたため使えない。練習場所は選手やコーチが公立の体育館を予約して確保、使用代金は立て替えた。ただ、旧運営会社がメーカーから提供を受けていたテーピング用具やスポーツ飲料は使えず、練習では飲み物を持参。市の体育館で、わずか5人で練習する選手たちを見て、「学校の部活動のようだ」と思った。

選手が悪いわけではない。ビジョンを持たずに運営したフロント、リーグの甘い審査など、問題点はいくつも挙げられるだろう。それでもしわ寄せは現場に来る。ある選手は給与の35%カットを提示され「続けようか、やめようか、迷った。家族もいるし、生活もある」と漏らした。

今季、NBLで経営難に陥ったのは和歌山だけではない。「つくば」も一時はリーグ管理下に置かれた。トップリーグで、シーズン中にチームが経営難になるということだけでも異常事態だ。しかも、それが2チーム。プロ野球やJリーグでは考えられないことだ。

各競技の最高峰に位置するリーグは、その競技をする子どもたちの憧れの場であるべきだ。私自身、幼い頃はプロ野球選手に夢を抱き、中学生になってバレーボールを始めてからは、Vリーグの選手たちに憧れ、試合会場にもたびたび足を運んだ。そうやって競技人口を増やすことに貢献し、日本の国際的競技力を向上させていくことにもつながっていく。NBLや和歌山の現状を見て、子どもたちがバスケットボールに夢を描くことはできるだろうか。

幸いにも和歌山は、ホームの会場を再び使えるようになった。会場の所有会社が旧運営会社との契約を解除し、和歌山に維持費以下の価格で貸してくれることになったからだ。その会社の担当者は「トライアンズを支援したいということ」と言った。和歌山県協会が設立する新運営会社の資金には、県民やファンから700万円を超える募金が寄せられている。くしくも、今回の騒動が県全体に和歌山トライアンズの存在を知らしめる形となった。

主将の川村卓也は「感謝の気持ちは非常に強い。元気づけてくれた和歌山の人たちのために結果で応えたい」と感謝を口にした。塚本鋼平コーチもこう言った。「もっともっと地域に根ざして、和歌山をバスケの街にしたい。そのために、選手たちがクリニックをする回数をもっと増やしたいし、僕がバスケの歴史や戦術を教える講座もやってみたい」

バスケットボール界は今、NBLとTKbjリーグの統合問題で揺れている。新しくできるリーグは、すぐにプロ野球やJリーグのようにはなれなくても、じっくりと時間をかけ、各クラブが今季のように経営難に陥らないように力をつけていって欲しい。そして、和歌山トライアンズが今回の問題を糧にして、バスケットボールを志す全ての子どもたちの憧れとなるチームに生まれ変わることを期待したい。

柄谷 雅紀(からや・まさき)1985年生まれ。大阪府箕面市出身。全国紙の新潟、横浜、東京社会部で事件や事故、裁判を5年半取材。2013年に共同通信に入社し、大阪運動部で14年はプロ野球のオリックスを担当した。15年からバレーボールやバスケットボール、陸上、Jリーグの広島などを担当。