新年を迎えた。3月に開幕する今季のF1でもさまざまな変化がある。日本で最も関心を集めているのは、1980年代に黄金時代を築いたマクラーレンと組んで復帰するホンダの動向だろう。新生マシン、MP4/30は29日に発表される。どのようなカラーリングで、どれだけの競争力を持つのか、2月から始まるテストを楽しみに待ちたい。

もう一つ、世界的に注目されているのが、6年間在籍したレッドブルで4度のワールドチャンピオンを獲得したセバスチャン・フェテル(ドイツ)のフェラーリ移籍だ。フェラーリで5度(通算ではF1史上最多となる7度)の年間王者に輝いた同郷の英雄、ミヒャエル・シューマッハーと同じ“跳ね馬"でチャンピオン奪還を目指すことになる。

フェテルは常々「僕のアイドルはシューマッハー」と公言。各カテゴリーのトップドライバーがさまざまなマシンで競う年末恒例の『レース・オブ・チャンピオンズ』国別対抗戦では、F1にデビューした2007年から6年連続でタッグを組み、6連覇している。ともに最年少となる初優勝や初年間王者などF1記録を次々と更新しているフェテルは、まだ27歳という若さも相まって―シューマッハーも認めるように―、彼の偉大な記録に挑戦できる唯一のドライバーだと言える。

ご存じのように、シューマッハーは13年12月、スキー中に転倒事故を起こし、約半年も意識不明状態に陥った。現在、意識は回復したものの、スイスで治療を続けている。

そんななか、昨シーズン終了を待たずにフェテルはフェラーリ移籍を発表した。どれほど成功しても、常にシューマッハーとの比較がつきまとう難しい移籍を決断した理由は何か。フェテルは次のように語る。

「僕が10歳のころ、ミヒャエルにアドバイスをもらったんだ。『僕は君に多くのアドバイスができるだろう。でも、君たちが走る時代は僕の時代と同じじゃない。だから自分のやり方を見つけることが大切だ』と。その言葉を胸に刻んで今日までやってきた。僕にとってフェラーリは憧れで多くのおとぎ話を聞いてきた。そのなかにミヒャエルもいた。今度は僕が、おとぎ話の一部となってフェラーリの歴史に刻まれていく。そのためにも、自分がやるべき事は理解しているつもりだ」

昨年11月にフェラーリのファクトリーを訪れたフェテルは約1000に及ぶ質問をエンジニアたちに浴びせたという。レース人生をかける覚悟で新たな挑戦を始めるフェテルに注目していきたい。(モータージャーナリスト・田口浩次)