今季の国内サッカーはJ2から復帰したばかりのG大阪が、タイトルを総なめにする3冠の快挙を達成して幕を閉じた。2005年にJ1初優勝、08年にはアジア・チャンピオンズリーグを制覇した「西の横綱」が、2年前のJ2降格のどん底から鮮やかな復権を果たした。チームをよみがえらせた長谷川健太監督の手腕、日本代表の遠藤保仁の落ち着き払ったプレーにも目を見張ったが、今季から担当となった私を引きつけたのは圧倒的な存在感を見せた22歳のFW、宇佐美貴史だった。

G大阪の下部組織で育ち、「ガンバの至宝」と称される宇佐美は17歳でJ1にデビューし、19歳でドイツの名門バイエルン・ミュンヘンへ期限付き移籍した。ドイツでは高い壁にはね返されて2年で挑戦を終え、昨季G大阪に復帰したが、やはり日本での輝きは別格だった。シーズン途中の里帰りながら、J2の18試合で19得点を挙げ、チームのJ1昇格に大きく貢献した。

試合前の選手紹介では、サポーターから最も大きな声援が送られる。反対に敵のファンからはひときわ大きなブーイング。ボールが渡ると、サポーターからはどよめきと歓声が一気に上がる。敵のファンは一瞬静まり、ゴールを決められて悲鳴を上げる。私自身も、彼がボールを持つと「何かをやってくれる」と、わくわくした。ゴールを最も予感させる瞬間だった。一瞬で相手を置き去りにするスピードに乗ったドリブル、そこから放つ正確で強烈なシュート。「俺に攻撃でできないことはない」と豪語する通り、時には中盤まで下がってボールをもらい、2トップを組むパトリックに正確なクロスやパスを供給する場面も何度も見せた。決定力抜群のストライカーながら、ゲームメークする能力を併せ持つ攻撃のスペシャリストだ。

組織だった守備の構築に力を注いだ長谷川監督だが、攻撃のフィニッシュの部分は「結局は個の力」と割り切っている。開幕直前に宇佐美が負傷し2カ月の離脱を宣告され、1日も早い復帰を望んでいたことだろう。宇佐美は5月6日、22歳の誕生日に徳島戦で先発に復帰。だが自らのゴールで祝砲を打ち上げたものの、チームはなかなか波に乗れずリーグ16位でワールドカップ(W杯)による中断に入った。再開後、チームは劇的に変貌し、驚異的な躍進を見せた。その原因を取材すると、選手や監督はいくつか進化した点を挙げてくれたが、DF丹羽大輝の言葉はシンプルだった。「(宇佐美)貴史が戻ってきただけ」。合点がいった。遠藤、今野泰幸ら日本代表を擁しても宇佐美が欠けては、G大阪の選手らはいまひとつ自信が持てなかったのだろう。最前線で確実にゴールを奪い、安心させてくれる選手が必要だったのだ。

宇佐美自身もすでに大黒柱を自任している。「今季の10点は物足りない。圧倒的な力を示したい」と言うが、大言壮語とは受け取れない。もっと点を取れたのではないかと思う。来季のJ1では20点、30点とゴールを量産する姿が見たい。再び海外に挑戦する意志があるだろうが、再びG大阪の黄金時代を築いてから「もう日本で俺を止められるやつはいない」と高らかに宣言して海を渡ってほしい。

榎元竜二(えのもと・りゅうじ)1979年生まれ。埼玉県出身。2002年共同通信入社。名古屋、岐阜、水戸の支社局と本社スポーツデータ部を経て12年から大阪運動部。サッカー、相撲、ゴルフなどを担当。

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