8年ぶりに開催された日米野球で、日本代表は米大リーグ(MLB)オールスターチームに3勝2敗と勝ち越した。MLBのチームに勝ち越したのは実に24年ぶり。2017年に予定されているワールド・ベースボール・クラシック(WBC)での世界一奪還に向け、侍ジャパンにとっては上々の結果となった。一方で、コンディションを含め、両チームの試合に臨む「温度差」が大きかったのも事実。不完全な「真剣勝負」を追いながら、日本野球の未来について思いをはせることも多かった。

今回、大義名分として強調されたのは「侍ジャパンの強化」だった。テレビの地上波での野球中継が減り、人気の低迷が指摘される中、日本野球機構は新たなファン獲得の起爆剤として日本代表を常設化した。とはいえ、国際試合の枠組みは確立しておらず、対戦相手を探すのにも苦労する状況。日米野球の復活は当然の成り行きだったとも言える。

メジャーのプレーを生で見られる機会は少ないし、実際に貴重な経験をすることができた。ただ、今までの日米野球と本質的な意味で変わったとは思わない。MLBオールスターチームのファレル監督が「来日前の準備期間は2日間。もう少し練習時間を持てばより良い状態で大会に臨めた」と明かしたように、迎え撃つ側の意気込みが変わっても、MLB側の立場は変わっていないのが現状だ。

2006年のWBC創設で一度役割を終えた試合を復活させなければならなかった事態は、日本球界の苦境の裏返しでもある。代表ビジネスを育てることは12球団の思惑も一致しやすく、重要な方策なのは間違いない。だが、足元では、交流戦の日程問題やコミッショナー選任でも露呈したように、リーグ間、球団間の対立が相変わらず繰り返されている。将来も魅力あるプロ野球にするために、まずは球団の枠を越えて「身を切る改革」を実現し、球界全体の発展を考えられる環境を整えることを忘れないでほしい。どこか浮足だった雰囲気に身を置きながら、あらためてそう感じた。

グラウンドに目を転じると、野球の違いを実感した。特に、今季首位打者に輝いたアルテューベ(アストロズ)の打撃は印象的だった。身長は日本人男性の平均より低い168センチ。実際はもう少し小柄に見えるベネズエラ人選手は「全力で振ることを心がけている」とバットをめいっぱい長く持ち、フルスイングする。第4、5戦は3安打。大谷(日本ハム)の150キロ超の速球もしっかりはじき返した。小柄な選手はバットを短く持ち、当てることが求められる傾向が根強い日本では、なかなか生まれない選手ではないだろうか。

また、カノ(マリナーズ)やエスコバル(ロイヤルズ)ら内野手の肩の強さや、しなやかな動きも目を引いた。トスを素手でキャッチしたり、崩れた体勢からノーバウンドで送球する華麗な守備には、歓声が上がった。日本代表の選手からは「僕らがやったら怒られる」とうらやむような声も聞こえたように、育成段階でも勝利至上主義が色濃い日本では堅実さを欠くプレーとされるかもしれない。だが彼らの姿は、バットを強く振る、ボールを速く、遠くに投げるという原点や、「見せる」ことの重要さを思い起こさせてくれた。

価値観や娯楽の選択肢が多様化し、以前のような圧倒的な地位を取り戻すことは難しいかもしれないが、5試合で約19万5千人を集めたように野球への関心は依然として高い。復活した舞台は示唆に富んでいた。だからこそ、学べるところは学び、日本球界の将来のためにも生かしてほしい、と野球ファンの一人として切に願う。

益吉数正(ますよし・かずまさ)1981年生まれ。宮崎県出身。2005年共同通信入社。千葉、甲府、福岡の支社局で警察などを担当後、11年から大阪運動部で高校野球を中心に取材。13年2月から本社運動部でプロ野球の遊軍担当。