つい先日まで、あれほど暑いと感じていたのに、気がつくと朝晩は上着の必要な季節に移り変わっていた。時間の経過は、本人が気づく、気づかざるにかかわらず、確実に状況を変えているのだ。サッカーの世界でも、同じことが言えるだろう。

話題は1週間前と少し古くはなるが、今回はこの問題に触れない訳にはいかないだろう。先日のU―16アジア選手権に続き、U―19日本代表もアジアの壁を破ることができず、年代別のワールドカップ(W杯)の出場権を逃したということだ。

10月17日、ミャンマーのネピドーで行われたU19アジア選手権の準々決勝。北朝鮮と対戦した日本は、1―1からのPK戦にもつれ込んだ試合を4―5で落とした。来年、ニュージーランドで開催されるU―20W杯の予選を兼ねていたこの大会でベスト4に残れなかったことで、世界への扉を閉ざされた形となった。

U―20W杯でのアジア予選敗退は、これで4大会連続。2006年を最後に、本大会出場を果たしていない。他の国ならば、これは監督を含めた現場レベルのスタッフに留まらず、協会幹部の責任問題になっていてもおかしくない大失態だ。アジアでも先駆けてプロ化した日本。Jリーグのクラブは下部組織を持つことを義務づけられている。つまり、この年代の選手のほとんどがプロの指導者に育てられた選手だ。それが、アジアでも結果を残せないというのなら、確実になんらかの問題を抱えていると考えたほうがいい。

テレビの解説者から伝わってくる言葉は、相変わらずだった。

「日本のペースですね」

「ポゼッションでは日本が圧倒しています」

「この場面も惜しかったですね」。しかし、スコアは動かない。

気温35度近くという悪条件。中3日の休息があった日本に対し、北朝鮮は中2日。明らかに北朝鮮の動きは鈍かった。それでも劣勢のチームにもチャンスが訪れるというのがサッカーだ。開始2分、36分と得点になってもおかしくないビッグチャンスを作り出す。

日本も決めるべきところを決めていれば、簡単に試合を終わらせることのできる内容だった。だが日本のサッカーは、最も突き詰めなければならないところの技術が欠如している。サッカーが判定ではなく、ゴール数で勝敗が決まる競技にもかかわらず、シュートがゴール枠にさえいかない。要はキックが下手なのだ。平均的にいろいろなものを詰め込めるのはいいが、ストライカーにさえシュートという最終目的の技術が、中途半端にしか指導されていないのだ。

「キックが下手やなー。俺なら目をつむってでもゴールの狙ったところに、シュートを蹴れるで」

日本が生んだ大ストライカー、釜本邦茂さんの言葉を思い出していたら、案の定、日本が先制点を奪われた。前半36分、日本DFのクリアミスがあったとはいえ、正確なクロスとヘディング。フィニッシュという面については、北朝鮮の技術の方がはるかに高レベルだった。

日本が各年代の代表で目指しているポゼッション重視のサッカー。それは間違ってはいない。ボールを持っている時間が長ければ、それだけチャンスを作り出す機会も増え、逆にピンチの回数も少なくなる。問題はその目的がなにかを理解していないことだろう。

ポゼッションはゴールを奪うための手段であって、目的ではない。だが日本のサッカーを見ていると、ポゼッション自体が目的となっている感がある。本末転倒だ。シュートがないサッカーはA代表にも共通する。ブラジルW杯のギリシャ戦。「こいつらは、なにをしたいんだ」と感じた人は多いだろう。若年層になると、その傾向はますます激しくなる。

シュートを打たなければ点は入らないし、シュートを打つためにはリスクを負わなければならない。北朝鮮戦では負けているのに、自陣で無意味な横パスやバックパスを繰り返すばかり。その間に余裕をもって守備陣形を整えた北朝鮮。堅く閉ざされた門をこじ開けるほどの技術力は日本にはない。それでも後半38分に日本は幸運なPKで同点とした。精神的に楽になった日本が決勝ゴールをいつ奪いに行くのか。注目していたが、勝負する姿勢は最後まで見られなかった。

延長戦に入って、度々繰り返される北朝鮮の遅延行為。キャプテンの南野拓実が主審に時計を止めるように再三の申し入れをするが、点を奪おうという気概のないチームに、その必要はなかった。勝負の放棄。そうとしか思えないチーム。日本にはいつからゴールに価値を見出せなくなってしまったのだろうか。

日本の若手選手は上手いという言葉を耳にする。しかし、それは日本国内だけで作り上げられた幻想なのではないだろうか。サッカーにおける「上手い」とはゴールを守ることであり、得点を挙げることに結びついていなければならない。それを考えればスペイン代表の「上手い」は勝利に直結していた。ただその“無敵艦隊"でさえ時の流れとともに無敵ではなくなる。それは歴史が証明している。

日本サッカー界の育成プラン。正しいと信じ込まれていた、これまでの考え方を改める時期に差し掛かっているのは明らかだ。少なくとも結果が出ない以上、現在行われている戦い方を、良いサッカーと言い切るにはかなり無理がある。このタイミングで大鉈を振るわなければ、日本のサッカーに未来はない。

ゴールを奪う気迫のないチーム。振り返っても、過去にそんなチームが優れたサッカーとして評価されたことなど、歴史上一度たりとも耳にしたことはない。

岩崎龍一[いわさき・りゅういち]のプロフィル

サッカージャーナリスト。1960年青森県八戸市生まれ。明治大学卒。サッカー専門誌記者を経てフリーに。新聞、雑誌等で原稿を執筆。ワールドカップの現地取材はブラジル大会で6大会連続となる。