若い頃に与えられた刺激というのは、何よりも価値がある。人生のすべての事柄に当てはまるのだろうが、ことスポーツに関しては世界大会を体験したか、否かではその後の目標設定に大きな差が出てくる。

「世界にはこんなすごい選手がいるんだ」

「世界でも自分の技術は通用するんだ」

勝敗のいかんを問わず、世界の舞台でそれが分かるだけでも、伸びしろのある若手にとっては大きな財産になる。

来年、ニュージーランドで開催されるU―20(20歳以下)ワールドカップ(W杯)。そのアジア予選を兼ねたU―19アジア選手権がミャンマーで開催されている。

フル代表のW杯出場が当たり前になり、日本はサッカーのレベルが上がったと思われている。ところが、U―19日本代表を見ると、U―20W杯への出場権を3大会得連続で逃しているのだ。U―20W杯は2年ごとに開催されるのだが、2回に1回ははざまの年代が生まれる。基本的に23歳以下の世界大会である五輪が、4年ごとの大会だからだ。五輪から外れる今回のチームは、U―20W杯の出場権を逃せば、次に残されるのはA代表のW杯だけ。プロ契約年齢になってから世界大会を経験せずに、最高峰の大会に挑んでいかなければならない。

今回ミャンマーで戦いを繰り広げている日本代表。彼らにも残念ながら「日本病」が巣くっている。決めるところで決められない。先日のジャマイカ戦で、数多くの決定機を迎えながらも、オウンゴールの1点しか挙げられなかったアギーレジャパンと同じ問題を抱えているのだ。

初戦となった10月9日の中国戦。試合を優位に進めながらも、中国に少ないチャンスを決められ1―2の敗戦。いきなり第1戦で後のない状況に追い詰められた。

続く10月11日のベトナム戦。試合の展開は確かに劇的なものとなった。後半14分に奥川雅也のゴールで先制。その後、圧倒的にゲームを支配しながらも、後半45分にワンチャンスを生かされ1―1の同点に持ち込まれた。残されたアディショナルタイムは6分で、中谷進之介、井手口陽介が連続ゴールを決めたからいいものの、大会がここで終わっていてもおかしくなかった。

「内容的にはよかった」

A代表、さらに年代別の日本代表からも、この言葉がよく聞かれる。そして多くのファンは、そろそろこの言葉に飽き飽きしているのではないだろうか。確かに試合内容がよいことに越したことはない。だが、勝負をする以上、特に公式戦である以上、最優先されるのは勝利という結果だ。

武士の情け。古き伝統があるからなのか、日本のサッカーは数多くのチャンスがあっても、相手に止めを刺さない。結果的に相手は息を吹き返し、逆に困難な状況に追い込まれる。もし中国やベトナムに止めを刺していれば、大会はもっと余裕を持った状況になっていたはずだ。

グループリーグの2戦を終えて1勝1敗の3位。10月13日の第3戦は、日本が2位中国に直接対決で敗れているために、首位の韓国に勝つしか決勝トーナメント進出の道が残されない状況だった。

前回王者との対戦を前に、追いこまれた状況ではあったが、日本にとってよかったのは目標が「勝つしかない」ということに絞られたことだろう。さらに気温35度のも達するなかで中1日の日程。日本が5人のメンバーを入れ替えたのに対し、韓国は1人だけ。この選手起用もコンディション面を考えると日本に有利に働いた。

試合はセレッソ大阪でもレギュラーとして活躍する南野拓実の個人技から、開始13分に先制。その後、17分にも川辺駿の縦パスを受けた南野がGKと1対1になる場面を作り出したが、決めることはできなかった。

追加点を挙げられない。そういう流れのときは相手にもチャンスが生まれる。案の定、前半29分にCKからの流れでキム・グンヒに同点ゴールを許す流れとなった。

この日、前の2戦と違ったのは、最も頼れる南野に決定機が訪れたことだ。後半20分、流れるような展開からポストに入った北川航也の落としたボールを南野が豪快な右足シュート。結果的にこれが2―1の決勝点になった。

チャンスの数こそ多くはなかったが、後半だけでも南野には3分、26分とビッグチャンスがあった。これを決め切れていれば展開はもっと楽なものになっていたことは間違いない。

日本の試合を見ていると、少年時代を思い出す。夏休み終盤に宿題に追われる自分の姿だ。

「出来るときにやっておきなさい」

母親に耳にタコができるほど言われた言葉を、日本代表にそのまま言ってやりたい。

「取れるときに取っておきなさい。そうすれば慌てることはないから」

親の言葉は、大方は間違っていない。

宿敵・韓国に対しての大一番での勝利。同じ韓国に敗れた、U―16、U―21代表の敵を討ったからといって、U―19日本代表の戦いがここで終わった訳ではない。10月17日の北朝鮮戦。これに勝って、来年のW杯出場権を手にすること。世界に挑めるチャンスを得ることで、初めて韓国戦の勝利が意味を持ってくる。

岩崎龍一[いわさき・りゅういち]のプロフィル

サッカージャーナリスト。1960年青森県八戸市生まれ。明治大学卒。サッカー専門誌記者を経てフリーに。新聞、雑誌等で原稿を執筆。ワールドカップの現地取材はブラジル大会で6大会連続となる。