男子のワールドカップ(W杯)出場が当たり前になったなかで、とかく世界大会ばかりに目が行くが、アジアの大会も簡単ではないとあらためて思わせられる週末からの連休だった。

韓国の仁川で行われるアジア大会は開会に先立ち、サッカー競技が始まった。レギュレーションは五輪と同じで、男子は23歳以下に3人のオーバーエイジ枠を加えたチーム。日本は2年後のリオデジャネイロ五輪を見据えて、当地で該当メンバーとなる21歳以下のチームで臨んでいる。一方で女子は年齢制限はなしだ。

9月14日に過去2度の準優勝の経験があるクウェートと戦った男子U―21日本代表。手倉森誠監督の率いたチームの初戦の入り方は手堅いというのが第一印象だった。DFラインに左から植田直通、西野貴治、岩波拓也の185センチ超の大型センターバックを並べる3―4―3システム。しかし、守備時には左右のアウトサイドを務める山中亮輔と室屋成が最終ラインに入り、5バックの布陣を取る。守る場面はしっかりと守るという姿勢は、1次リーグのある国際大会での初戦の大切さを、W杯ブラジル大会でのザックジャパンを反面教師として強く意識していたからだろう。初戦で敗戦を喫すれば、残り2試合、あとのない戦いが続くというのは明らかだからだ。

ブラジル大会でザックジャパンが1次リーグ敗退を喫した直後、キャンプ地のイトゥからサンパウロに移動した。そのときに偶然、同じホテルに泊まっていたのが、五輪に向け現地視察中の手倉森監督だった。そのとき語っていたのは「世界を相手にしたときに、自分たちのやり方だけを押し通せるものではない。場面によっては現実的に守備を固めることも必要。負けないことが大切だ」ということだった。

確かにクラブの監督なら負けても次につながる試合も許されるだろう。しかし、代表チームは負けた時点で大会が終わってしまうことがほとんどだ。代表監督というのは、結果とチームの成長を同時に求められる。難しい職業だ。

クウェート戦のU―21日本代表。結果は4―1の大勝だった。前半終了間際の43分の大島僚太の見事なコントロールからの先制点。後半5分の右CKから植田の折り返しを鈴木武蔵が押し込んだ2点目。ピンチはあったものの、大会初戦の出だしとしては良い出来だったのではないか。

ただ気になったのは、2―1とされた後半25分の失点だ。右サイドからのクロスを相手FWと競り合いながらGK牲川歩見がファンブルしたボール。それを詰められたわけだが、あの場面でキャッチングにいく判断は間違いだろう。パンチングなら問題もなかったと思うが、ベネズエラ戦のGK川島永嗣のキャッチミスではないが、GKのイージーミスはチームの雰囲気を悪くする。正しい判断と集中力さえ保っていれば防げる失点なだけにもったいない。

事実、その後の流れはクウェートにいった感があった。直後の29分に左CKからのサインプレーで岩波が再び2点差とるゴールで突き放し事なきを得たが、自分たちの単純なミスで自らのリズムを崩すという場面をなるべく減らさなければならない。それが大会を勝ち上がる最低限のポイントだろう。

前回大会で初優勝。周囲では「大会連覇」を期待する声も多いが、年齢制限のある男子に限っては4年前とはまったく別のチーム。なるべく数多くの真剣勝負を経験し、2年後のブラジルに向けアジアの他国には「日本にはかなわない」の印象を植え付けてほしい。4年前もそうだったが、この年代のチームは1試合ごとに目に見える成長を見せる。ユニフォームの左胸に日の丸をつけて戦える国際大会は、JOC(日本オリンピック委員会)主導となる五輪とアジア大会だけ。W杯ブラジル大会のチームからは伝わってこなかった、国の誇りを懸けて戦うという意識。国際大会では、それを持つだけで戦い方も変わってくるはずだ。

その意味で、なでしこジャパンは常に真の意味での国の代表という雰囲気が伝わってくる。世界王者に輝いたベテランたちが、新たに入ってくる若手に日の丸を背負うことの意味を正しく伝えているのだろう。キャプテンの宮間あやが常々「アジアでは負けられない」と口にしているが、その言葉も実績に裏付けられているからこそ頼もしい。

初戦となった9月15日の中国戦では、相手GKの好守もあって0-0の引き分け。前半こそピンチはあったが、後半は中国のシュートをゼロに抑えるなど内容的にはそれほど心配するものではなかった。

今回のチームは大黒柱の澤穂希や、大儀見優季を始めとした海外組が不参加。そのなかで若いメンバーを加えたチームで連覇を飾れば、来年のW杯に向けての大きな底上げとなるだろう。北朝鮮、中国、韓国と男子に比べれば世界的な強豪の揃うアジア地区。この激戦区でのなでしこの戦いぶりに注目したい。

アジア大会に注目が集まる一方で、残念なニュースも飛び込んできた。タイで開催されていたU―16アジア選手権だ。9月14日に準々決勝で韓国と対戦した日本は、0-2の敗戦を喫した。この大会は、来年チリで開催されるU―17W杯の予選を兼ねていただけに、5大会連続の出場権を逃したのは、なんとも痛い。

ベスト8入りした2011年、ベスト16の2013年と吉武博文監督に率いられたチームは、常に高度な技術のポゼッションサッカーで世界から高い評価を受けていた。それだけに、世界大会でそのサッカーが見られないのは残念だ。ただ、良いサッカーをしても結果が伴わなければ競技ではない。アジアを舞台にしても、そう簡単にはいかないということを改めて思い知らされた一報だった。

岩崎龍一[いわさき・りゅういち]のプロフィル

サッカージャーナリスト。1960年青森県八戸市生まれ。明治大学卒。サッカー専門誌記者を経てフリーに。新聞、雑誌等で原稿を執筆。ワールドカップの現地取材はブラジル大会で6大会連続となる。