サッカー女子のプレナスなでしこリーグ、INAC神戸の取材を始めて約3年。チームは日本代表「なでしこジャパン」のメンバーを多く擁し、昨年はリーグ3連覇を含むタイトル4つを総なめにした。まさに無敵の女王だったが、今年は苦戦を強いられている。優勝に貢献した韓国代表の池笑然、DF近賀ゆかり両選手はイングランドへ行き、点取り屋のゴーベルヤネズは米プロリーグのNWSLへ期限付き移籍。

そして一番の打撃は主将だった川澄奈穂美選手のNWSL移籍だった。プレー、精神両面でチームを引っ張ってきた存在が抜けた影響は今季のリーグ戦の結果を見れば分かるが、約5カ月の海外挑戦を終え9月3日にINAC神戸の練習場に現れた彼女を見て、その存在の大きさを改めて実感した。

2011年の女子ワールドカップ(W杯)で優勝に貢献してから日本代表では主力として戦う川澄選手。神戸で取材していていつも思うこと。それはとにかく「強い」。サッカーでも圧倒的な身体能力と運動量を誇り、小柄な体ながら鍛え上げられていて当たり負けしない。日々のトレーニングでの努力を怠らず、自らを追い込むことを全く辞さない。また、代表に合流するため海外から長時間かけて移動をしても、次の日から2部練習を当たり前のようにこなす。疲れた様子は一切なく「飛行機で爆睡したので」と、にっこり笑ってみせる強靱な肉体の持ち主だ。そして何よりもメンタル面が強く、日頃取材をしていて最も感心させられる点だ。いつ話していても言葉に迷いが一切なく、勝っても負けても浮かれるところも落ち込むところも見せない。

昨年は主将としてシーズン前に4冠を掲げ、一つ一つタイトルを取っていっても「私たちの目標は4冠なので」と慢心せずに突き進み、宣言通りの成績を残した。途中、試合内容が良くなくても結果がついてくるという事態が続き、理想のサッカーができていないと強い危機感を抱く者と一方で現状に満足する者が混在。足並みがそろわない時期もあったが、すべて乗り越えて優勝へとけん引した。

その川澄選手が米国に旅立ち、INAC神戸は開幕からいきなり4年ぶりの2連敗を喫した。昨年途中まで48戦負けなしだった常勝軍団の苦戦はクラブにとってもある程度想定内だったが、10チーム中6チームが進出する上位リーグへ5位で辛うじて通過。4連覇に向けて追いかける厳しい状況となった。高瀬愛実主将や澤穂希選手らは思うようなプレーができない若手に対してお手上げ状態で、澤選手は「サッカーをやっていてここまで負けたことがない。何をどうすればいいのか正直分からない」とまで言った。

そんな窮地に、米国で一回り成長した川澄選手が戻ってきた。空気の重さを感じたのか、早速練習初日から大声でチームメートを叱り、同じ右サイドでプレーするDFの新人選手とじっくり話し込むなどして練習に緊張感をもたらした。昨年まではそのようなことはしていなかったが「ことしのチームは難しい。引っ張って行かないといけない」とチームの浮上のために力を尽くす覚悟でいる彼女を見て、確固たる思いを感じた。

7日の国内復帰初戦は早速ゴールを決めたが、チームは4失点を喫して6位に転落。4連覇への道は一層険しくなった。苦境の中で、成熟した川澄選手がどのようにチームを再起させるのか。その過程を見守りながら勝利へとつながる日を待ち望んでいる。

星田 裕美子(ほしだ・ゆみこ)2010年に共同通信入社。同年12月から大阪運動部勤務。主に陸上、サッカー、アマ野球を担当。1986年生まれ。東京都出身。